会社によっては、残業が全くないところもあれば、月に100時間を超える残業を命じられる会社もあり、職場によって残業時間数は大きく異なります。
そもそも、残業時間数というのは会社に命じられてしまえば無制限に従うしかないのでしょうか? 今回の記事では、この残業時間数について考えてみたいと思います。
Q.36協定が締結されていれば残業は無制限?
A.現行の法制度では、最大半年間はほぼ無制限に働かせても、残業代さえ支払われていれば違法にはなりません。
会社が従業員に残業を命じるためには、雇用契約書や就業規則にて残業を命じることができると定められている必要があります。また、「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)」を労働基準監督署に提出する必要もあります。
そもそも、労働基準法では「1日8時間、週40時間」しか労働させてはいけないと定められているのですが、36協定を締結することでこれを超える残業を従業員に命じることが可能になります。
ただ、36協定を締結していても、原則として月の残業時間の制限は「45時間まで」とされています。
しかし、例外として、36協定に「特別条項」という内容を定めておけば、月45時間を超える残業を1年のうち6回まで命じることが可能です。
ここで厄介なのは、「特別条項」を発動した場合の労働時間数の上限は法律上特に制限がないという点にあります。
つまり、1年のうち半年は「青天井」で残業を命じたとしても、残業代さえ支払われていれば、例えば月100時間を超える残業が発生しても法律上特に問題はないのです。
EUなどでは、その日の勤務終了時から翌日の勤務開始まで「休息時間(インターバル)を11時間確保しなければならないという規制がありますが、日本にはこのような規制がないため、例えば朝方の5時まで残業したとしても、その日の9時には出勤しなければならないことになります(それでも違法にはなりません)。
過重労働が日本から消えないのは、残業時間数の上限が法律で明確化されていないことにあり、今後の日本の大きな課題であるといえるでしょう。
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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