2017年5月、あるセルフガソリンスタンドを経営するグループ会社が、従業員が関与していなくても客がセルフで給油できるようにしていたことがテレビ局の取材で発覚。担当地域の消防本部が消防法に抵触すると改善を指示しました。
該当のスタンドでは店員がいなくとも、給油を許可するタッチパネルを自動的にノックする仕組みの機械を社員が自作して、2016年10月から使用していたそうです。
セルフガソリンスタンドは、人件費を節約しているぶん、安い値段でガソリンを提供できますが、完全に無人であることはなく、無人と思えてもスタッフはいます。
ガソリンという揮発性の高い燃料の給油を一般の人に任せているわけですから、ドライバーがくわえタバコをしていたり泥酔していたりしないか店員が確認してから、ガソリンが出るように操作することが消防法で定められているわけです。
そうでないと、なにかの拍子に給油ノズルが外れてガソリンが出っぱなしになって、大事故になってしまいます。
万一、摘発されたスタンドのように機械が人のいるいないに関わらず給油自由にしていたら、引火事故で死傷者が出るケースもあるかもしれません。
その場合はどうなるのでしょう? 桜丘法律事務所の大窪和久弁護士にお聞きます。
■引火事故で死者が出れば業務上過失致死罪に
「店員が危険がないのを確認せずに給油を開始させた結果引火し死亡事故につながったということであれば、ガソリンスタンドの店員に重大な過失があるということになりますので、業務上過失致死罪に問われることになるでしょう」
摘発、というより今回、改善指導は消防署が消防法に則って行いました。しかし、事故が起これば刑事罰に問われます。
では、雑居ビル火災などで取り上げられることも多い、消防法とはどんな法律なのでしょうか?
「消防法は、火災から国民の生命等を守るために制定された法律です。火災の予防、被害の軽減及び火災等による傷病者の搬送に関する事項を定めています。
罰則も定められており(38条以下)、消防設備の破壊や、消防行為の妨害や、消防設備に関する消防署長の命令に反する行為等についてはやった行為の内容に応じて裁判所により懲役や罰金が科されることとなります。
また容疑者は他の犯罪の容疑者同様に逮捕されることがあります」
消防設備の確認・指導などを行うのが消防署のため、逮捕とは縁遠そうに思えますが、火災は一度起これば大きな被害を出し、それだけに、実は厳しい罰則も用意されているのです。けっして軽く扱ってはいけない法律といえるでしょう。
ただ所轄の消防署についてはこのような事故が起こったからといって管理責任が問われるということにはならないそうです。実際、多くの施設を見て回るのは人数的に困難です。
今回はテレビ局の取材で発覚しましたが、客として訪れたスタンドでおかしな機械を取りつけていたら、注意して見てみることも必要かもしれません。
*取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)
*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)
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