赤信号を通過した救急車が一般車両と事故を起こした場合、どちらが悪い?

救急車

サイレンを鳴らして走る緊急車両。

パトカーや消防自動車、救急車などの緊急車両が赤信号を突っ走っていく光景を目にする事が多いと思いますが、赤信号を無視して交差点に侵入した緊急車両と青信号だからということで交差点に進入した一般車両が衝突した場合、どちらの過失が大きいでしょうか?

 

●過失割合が真逆に認定されたケースがある

事案の内容は、交差点において、北から南に向かって青信号で同交差点に進入した一般車両が、東から西に向かって赤信号で同交差点内に進入した救急車の右側面に衝突したケースです。

争点は、救急車と一般車両の過失の有無及び過失割合で、第1審は救急車が道路交通法上の緊急自動車であることを前提としても、過失割合は、救急車が7割、一般車両が3割と認めるのが相当であるとしました。

 

●第1審では

過失相殺に関する第1審の判断の骨子は、次のとおりです。

(1) 一般車両には、前方の注視を怠り、前方14.5mの地点に至るまで救急車を発見し得なかった過失が認められる。
(2) 救急車には、赤信号で交差点に進入するにあたり、交差点手前で左右の安全を確認するなど、他の交通に注意すべき義務を怠ったまま交差点に進入した過失が認められる。

(3)一般車両は、衝突地点から51m手前で救急車の接近を認識し得たが、事故を回避するためにはそこから直ちに急ブレーキないしハンドル転把により衝突を避けるという、かなり困難ないし非日常的な運転操作が要求されるのに対し、救急車が事故を回避するためには、赤信号の交差点に進入する前に南北道路を南進してくる車両に注意を払うという極めて基本的かつ日常的な注意義務を履行しさえすればよかったのであるから、過失の度合いは、救急車方がより大きい。

 

●第2審では

しかし、救急車側がこの判決に不服で控訴したところ、大阪高等裁判所の判断は第1審とは真逆に過失割合を一般車両7割、救急車3割と判断しました(大阪高等裁判所平成19年12月4日判決)。

その理由は次のとおりです。

(1) 一般車両は、本件交差点の約30m手前を時速約50kmで走行中、救急車がウーウーサイレンを鳴らしながら赤色警光灯をつけて交差点に入ろうとしており、その時点で発見して制動措置を講ずれば十分衝突を避けられたのに、約20m手前で発見するまで救急車に気が付かずに進行したものであり、交差道路を通行する車両に注意すべき義務(道路交通法36条4項)を怠った過失がある。

 (2) 他方、救急車も、交差道路を高速で走る一般車両が青信号で交差点を通過しようとして約30m手前まで接近していたのに、これに気が付かないまま赤信号で交差点に進入し、しかも、ウーウーサイレン以外には交差道路通行車両に対する注意喚起を行なわなかったものであり、赤信号で交差点に進入する緊急自動車が他の交通に注意すべき義務(道路交通法39条2項)を怠った過失がある。

 (3) 救急車の発見が遅れた一般車両の過失は、青信号に従って進入したとはいえ、わずかの注意をしさえすれば容易に発見できたはずの緊急自動車を全く見落としたものであり、その過失の程度は重いものというべきである。

他方、救急車も、ウーウーサイレンを鳴らし徐行したとはいえ、交差道路の手前約30mという近くを青信号の交差点に時速50kmの高速で進行してくる一般車両を全く確認しないで交差点に進入したものであり、その過失の程度も決して小さくない。

しかし、本件救急車はウーウーサイレンを鳴らし徐行して交差点に進入した一方、一般車両は、わずかの注意をして救急車に気が付けば十分停止することができたのであるから、緊急自動車優先(道路交通法40条)の趣旨などをも勘案すると、相対的な過失の程度は、一般車両の方が重いものと評価すべきである。

したがって、本件事故の過失割合は、一般車両7割、救急車3割とするのが相当である。

 

結局,第1審の救急車が7割、一般車両が3割という判断は覆り、高裁では一般車両7割、救急車3割という過失割合になったわけですが、このように同じ事案であっても判断が真逆になる事がありますので、裁判は生き物だということが分かると思います。

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*著者:弁護士 桐生貴央(広尾総合法律事務所。「人のために 正しく 仲良く 元気良く」「凍てついた心を溶かす春の太陽」宜しくお願いします。)

桐生 貴央 きりゅうたかお 弁護士

広尾総合法律事務所

東京都港区南麻布5丁目15番25号 広尾六幸館301(主事務所)

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