ある会社で、新卒に「初任給で10万円以上するスーツを買って、領収書を提出しろ」と要求するケースがあるのだそうです。
本来領収書を提出したのならば、経費として返金処理などされるべき事例ですが、この場合はスーツを買った証明としての提出を求められており、会社からのフォローは一切ないとのこと。
このようなことはチラホラと散見されており、「初任給はこう使え」と指示してくることがあるようです。本件、違法性はないのでしょうか。
法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。
Q.給与の使い方を会社が指定する行為は違法ではありませんか?
A.違法です。強要罪に当たります。
「強要罪に当たりますので違法です。強要罪は、人の意思決定の自由を保護するための犯罪で、脅迫または暴行によって、人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりする場合に成立します。
もらった初任給(給料)を何に使うかは従業員の自由であり、従業員に10万円のスーツを購入する義務はありませんし、領収書を提出する義務もありません。
脅迫は黙示的なものでもかまいませんので、従わないと辞めてもらうようなことを暗に匂わせて指示した場合も強要です。スーツ以外のものでも同じく強要罪に当たりますので違法です」(冨本弁護士)
初任給をどのように使うかは個人の自由であり、それを妨害し「○○を買え!」と命令することは、「強要罪」に該当するようです。
新卒社員の場合、会社に物申すことはなかなか難しいと思いますが、法的に間違ったことを強いられている場合は「おかしい」と主張しましょう。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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