「強制参加」「飲酒や一芸の強要」…新入社員の歓迎会、どこから違法?

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新年度を迎え、あちらこちらで新入社員の歓迎会が行われています。新しい仲間として歓迎の気持ちを込め集い、出会ったばかりの社員同士が親睦を深める機会です。

一方で、「会社の飲み会が嫌い」という声も少なくありません。お酒が入る場だからこその無礼講や一歩踏み込んだコミュニケーションが疎ましく感じられるようです。

また、それは時にパワハラや犯罪行為にまで発展してしまうこともあります。飲み会での行為、いったいどこからが違法とされるのでしょうか?

 

■不参加者への嫌がらせはパワハラ!

会社の飲み会が嫌な理由として、「気を使う」「上司の自慢話がうざい」「説教される」「話題が制限される」「行かないと付き合いが悪いと思われる」「強制参加」「飲酒の強要」「一芸の強要」などが挙げられます。

周囲に気を使ったり人のグチを聞いたりすることは通常のコミュニケーションの範囲と考えられ、飲み会でこのようなことがあったとしても違法行為とはいえません。

嫌な相手には近づかない、話題を変えるなどして、なんとかやり過ごすしかなさそうです。また、後述しますが、無給での飲み会参加は強制ではありませんので、嫌なら出席しない、という選択もあります。

不参加を理由に仕事を減らされたり嫌がらせを受けたりした場合は職場でのハラスメントに当たり、違法性を主張して争ったり、改善を求めて団体交渉したりという方策をとることもできます。

 

■「強制参加」はグレー、「飲酒、一芸の強要」はギリアウト!?

飲み会が業務でなく無給の場合、飲み会への参加は就業時間外のプライベートとなり、これを強制することはできません。

接待など業務上必要な飲み会など、会社の指揮命令下にあるような場合には、労働時間に含むと考え残業代などを請求することができることもありますが、無給の飲み会はあくまで任意参加です。

参加すべきというムードや上司などの「参加しろ」という発言があったとしても、最終的に参加を決めるのはあくまで本人です。要請を断りきれない特段の事情がある場合を除き、「強制参加」は成立せず、違法とまではいえません。

「飲酒の強要」ですが、飲酒ももちろん業務ではないことが明らかです。また、アルコールを受け付けない体質の人もおり、これを強要するアルハラは許されることではありません。

飲酒の強要は法律で直接規制されているわけではありませんが、「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」という1961年制定の法律では、「すべて国民は、飲酒を強要する等の悪習を排除し、飲酒についての節度を保つように努めなければならない 」(第二条)と定められています。

また、脅迫や暴行を用いての飲酒強要は「強要罪」となりえますし、酔い潰す行為は過失傷害罪や傷害罪、被害者が死亡した場合は過失致死罪などに問われる可能性もあり、結果によっては重大な犯罪となりえます。

一緒にいて止めずにはやし立てるなどした人も共犯となることもあります。

「一芸の強要」も、直接禁じる法律はありません。しかし強要の度合いや芸の内容によっては強要罪やパワハラに当たるかもしれません。パワハラと認められれば損害賠償請求される可能性もあります。

適度な飲酒は心をリラックスさせ、円滑なコミュニケーションの助けになることでしょう。楽しいはずの飲み会がつまらない結末にならないよう、酒量は理性と良識を失わない程度に抑えたいものです。

 

*記事監修弁護士: 大達 一賢エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)

*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)

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大達 一賢 おおたつ かずたか

エジソン法律事務所

東京都千代田区神田錦町1-8-11 錦町ビルディング8階

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