昨今、重要文化財への「液体染み」事件が相次いでいます。
おもなところでは、沖縄県那覇市の重要文化財、「旧崇元寺」、東京都渋谷区の明治神宮の第2鳥居、東京都港区の増上寺などで、油のようなものがかけられたと跡と思われる染みが発見されました。
日本にとって重要な建造物を汚すということは、日本の歴史に泥を塗る行為と同じこと。許しがたい犯罪であるだけに早期逮捕が望まれますが、現在のところ犯人は特定されておらず、捜査は難航しているようです。
ところで、仮にこの犯人が捕まった場合、どのような罪に問われるかご存じでしょうか?
Q.重要文化財や建物を汚した場合、どのような罪に問われる?
A.建物は器物損壊罪、重要文化財は文化財保護法違反に問われます。
建物を汚した場合は、刑法261条の器物損壊罪となります。
他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。(刑法261条)
「損壊」と聞くと、油を撒いて汚す程度では該当しないようにも思えますが、器物損壊における「損壊」とは、物の本来的な効用を害する行為を指しますので、建造物に容易にとれない油染みを生じさせた行為も器物損壊に該当します。
また、旧崇元寺のように重要文化財を怪我した場合は罪が重くなります。文化財保護法違反となり、5年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
ご覧の通り、決して軽い罪ではありません。文化財はもちろん、公共物や私有物などに「落書きくらい良いや」などと考え、実行するのは絶対にやめてください。処罰されるということのみならず、先人たちが培ってきた歴史をも否定するような行為は、あまりに悲しいものです。
そして、一連の「油染み」犯人が早期に逮捕されることを願いたいものです。
*記事監修弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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*kuro / PIXTA(ピクスタ)
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