2018年度卒業見込みの学生の就職活動が解禁してから1ヵ月が経ちましたね。
経団連に所属している企業は選考の開始が6月となっているため、面接を実際に経験したことがない学生さんもいらっしゃれば、経団連に所属していない企業の面接を既に経験している、という学生さんもいらっしゃるかと思います。
新卒学生の就職活動だけではなく、転職活動の際にも、面接は避けて通ることはできない道かと思います。
そんな面接ですが、求職者をバカにしたり、そもそも採用する気が無いのに、ストレス発散の為に面接をしたりする企業も少なからず存在しているようです。
今回は、そのような面接が違法ではないのか、また、そういった場面に遭遇したらどう対処すればいいのか、といった点について解説していきます。
■1.そもそも採用する気がないのに面接をする行為は違法か
面接をするだけでは犯罪に当たりませんが、求職者を馬鹿にしており、求職者の人格的な利益を侵害していると考えられますので、生じた損害(交通費、面接のためにアルバイトを休んだ場合の休業損害、精神的損害等)について民事上賠償請求できる程度の違法性はあるのではと考えます。
面接官が面接をするだけでなく、さらに面接の中で求職者を侮辱・名誉棄損するような言動を行ったのであれば、刑事上も違法となり、侮辱罪・名誉棄損罪が成立する場合もあります。
■2.圧迫面接やその他の行為の違法性について
圧迫面接とは、面接官が求職者に対して威圧的な態度をとったり、回答に困るような質問をしたり、細かいことを厳しく批判したりして行う面接のことです。
圧迫面接は、客からのクレーム等のトラブルに直面したときの求職者の対応力を試したり、打たれ強さがあるかを確認したりするために有用であり、一定の限度までは企業の採用の自由の行使として適法であると考えられます。
しかし、企業の採用の自由といっても何でもありというわけではありません。
圧迫面接についても社会的に許容される限度を超えるような目的・態様で行い、求職者の人格的利益を著しく侵害したような場合、民事上賠償請求できる程度の違法性があると考えます。
例えば、1.のケースのようにそもそも採用する気がないのに面接に呼び出して圧迫面接を行う場合には社会的に許容される限度を超えるような目的で行われているといっていいでしょう。
また、求職者の対応力・忍耐力を試すためといっても、侮辱・名誉棄損・脅迫・暴行・傷害・強要・強制わいせつ等に当たるようなやり方は犯罪に当たります。
また、常識では考えられないような圧迫を加えて求職者を精神疾患すれすれにまで追い込んだような場合には傷害罪に当たらないまでも民事上賠償請求できる程度の違法性があると考えます。
面接官が求職者の信教を聞くことについては、好ましくありませんが、企業にも採用の自由があるため、場合によっては違法ではないと判断されたケースもあります。
「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有するので、労働者の雇用、雇用条件につき原則として自由にこれを決定できる。企業者が特定の思想、信条を有する者をその故をもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。」と述べた最高裁の判例もあります(三菱樹脂事件)。
■1.や2.の状況になったらどう対処すればいいのか
1.の状況の場合、争っても割が合いませんので、すぐにその場を辞去するのが良いでしょう。
2.の状況の場合、求職者の対応力や忍耐力が試されている場合もありますので、求職者次第かと思います。
自分の性格からして我慢できないと思えばその旨述べて辞去するのが良いでしょうし、対応可能であれば自身の対応力をアピールすると良いと思います。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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