人手不足の企業が多く、求職者にとって売り手市場が続いていることから、実はここ数年国家資格をはじめとする各種資格の受験者数は下がり続けています。資格ブームは少し冷めてしまったのかもしれませんね。
とはいえ、会社に命じられて一定の資格取得を命じられるということはよくあることだと思います。そこで、もしこの資格を取得することができなかった場合、会社から給与を下げられてしまうなどということは許されるのでしょうか?
Q.業務命令だった資格が取れなかったからって給与減額……そんなのアリ?
A.給与は雇用契約で決まっているため減額は出来ませんが、降格などによって実質的に給与が下がってしまう可能性は考えられます。
まず、大原則として給与額は雇用契約によって決まっているため、たとえ業務命令であった資格を取得できなかったからといって給与を減額するなどということは許されません。しかし、結果的に給与が下がってしまうケースは考えられます。
例えば、「衛生管理者」という資格がありますが、これは従業員数50人以上の事業場では法的に選任することが義務付けられています。仮にその規模の事業場の支店長に任命され、併せてそこの管理者として衛生管理者資格の取得を命じられたとします。
ただ、いつまで経ってもこの試験に合格できなかった場合、会社として衛生管理者は必ず選任しなければなりませんから、この従業員を支店長から降格し、衛生管理者を取得している別の人を支店長に任命するかもしれません。
このような場合は降格(会社の人事権の範囲であり、特に違法ではありません)となるので、役職手当などが無くなり、実質的に給与が減額となってしまいます。
また、直接給与の減額は出来ないものの、一定の資格取得を昇進・昇格の条件とすることは会社の自由なので、資格未取得を理由に昇給がなされないというようなことは充分に考えられるでしょう(ただ、資格取得についてはその学習に費やす時間を労働時間にすべきかどうかなど現在かなり物議を醸している問題でもあります)。
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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