「これ家で覚えてきてね!」自宅での勉強は労働時間に含まれる?

転職して新しい会社に入社したときや、異動で新しい部署に配属されたときなど、今まで行っていた業務とはまるっきり違う業務に携わるタイミングがいくつかあるかと思います。

教える側が1から10まで全て教えることができれば問題はありませんが、研修などでは教えきれない内容に関して、本や資料を渡して「これ家で読んで覚えて来てね!」といった指示が出される場合があります。

こういった指示は中々断ることができず、家で黙々と読み進めていて、ふと「これって業務では?」なんて思う方もいらっしゃるかと思います。

今回は、こういった家での業務内容を把握する場合などに自宅で勉強した時間が労働とみなされるのか、解説していきたいと思います。

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

 

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■自宅で勉強した時間が「労働時間」に当たるかどうか?

結論から言うと、自宅での勉強が勤務先の指示であり労働者が拒むことができない場合、自宅で勉強した時間も「労働時間」に当たると考えます。

すなわち「労働時間」とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいますが、使用者の明示的な指示によって業務を行っていた時間はもちろん、黙示的な指示によって業務を行っていた時間も含みます。

そして、「労働時間」に該当するかどうかは、労働契約や就業規則の内容によって決まるものではなく、労働者の行為が使用者から義務づけられていたといえるかどうかによって決まります。

したがって、自宅での勉強についても勤務先からの指示であり義務づけられていると評価できるのであれば「労働時間」に当たるわけです。

ちなみに、平成29年1月20日に厚生労働省によって「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定されました。

そして、その中では「労働時間の考え方」という項目が設けられ、「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」は「労働時間」に該当する場合の具体例として挙げられています。

 

■自宅で勉強した時間が「労働時間」に該当する場合

自宅で勉強した時間が「労働時間」に該当する場合、労働者は、勤務先に対し、その分の時間外手当を請求することができます。

また、勤務先は、労働者が時間外労働をすることによって「労働時間」が1日8時間あるいは1週間に40時間を超える可能性がある場合、時間外労働について協定を締結する必要がありますし割増の時間外手当を支払う必要もあります。

勤務先が時間外労働に必要な協定をしないことや時間外手当の支払いを拒むことは労働基準法違反になる可能性があります(時間外労働を加算することによって労働時間が、1日8時間あるいは1週間に40時間を超える場合)。

理屈としては、以上のようなことになろうかと思いますが、労働者が時間外手当を請求する場合、勤務先の指示であったことや自宅で勉強した時間の立証は必ずしも簡単ではありません。

したがって、労働者としては、勤務先に対して、自宅での勉強が業務命令であることを確認した上で、勉強に必要な時間について提示し了解をもらった方がいいでしょう。

勤務先の方も、労働者とのトラブルを避けるために、やむを得ず所定内労働時間を超えて労働者に業務のために必要な勉強を行わせる場合でも、正式な手続を踏むのはもちろんですが、就業時間を管理できるよう自宅で行わせるのは可能な限り避けた方がいいでしょう。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

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冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

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