佐村河内氏が、JASRACに登録している楽曲について凍結されていた印税の支払いを求めて、代理人を通じて接触を図っているとのことです。
その前提として、佐村河内氏には著作権が帰属していることが必要になりますが、果たして、佐村河内氏の著作権は認められるのでしょうか、そして印税を手にすることはできるのでしょうか?
おそらく、読者のみなさんはじめ、この騒動を興味深く追っておられる皆さんの結論は、彼が印税を請求できるだなんて結論になっていはいけない、と考えておられる方がほとんどだろうと思います。
そこで、今回は純粋に理屈でいくとどうなるというよりも、読者の方々の代理人として、彼が印税を請求できないという結論になるように、法律構成をしてみたいと思います。
■新垣氏から著作権の譲渡を受けている
まず、佐村河内氏の主張としては、新垣氏から著作権の譲渡を受けているということがあげられます。
しかしながら、ゴーストライター契約のところでも書きましたが、確かにゴーストライター契約は、著作権の譲渡、その対価の支払い、そして、氏名表示権を行使しないことの約束から成り立っていますが、著作者でない者の実名もしくはペンネームを著作者とした場合には著作者名詐称罪(著作権法121条)という刑事罰の対象とされており、いわば犯罪を犯すことを目的とした契約となりますので、これは公序良俗違反(民法90条)として、全体として契約が無効になります。
そうすると、著作権は未だ新垣氏に属していることになりますが、一方の新垣氏は、佐村河内氏に提供した楽曲については著作権を放棄すると言っていますので、今、「交響曲第1番(HIROSHIMA)」をはじめ数々の楽曲の著作権は宙に浮いている状態にあるわけです。
佐村河内氏としては、この結論を覆すためには、自らも著作者の一人ということを主張するしかない、つまり、これらの楽曲は、新垣氏との共同著作だということを主張するしかありません。
■自身も共同著作者の一人という主張
そのため、曲のスケッチをした、構成を考えた等々の主張をして、自らも共同著作者の一人であることを認めてもらえれば、新垣氏が著作権を放棄している以上、凍結された印税を受け取ることができるということになるのです。
おそらく、今後佐村河内氏は、JASRACに対して印税支払いの裁判を起こし、その裁判の中で共同著作者であることの確認を求めていくことになると思いますが、必ず新垣氏の証人尋問がなされるでしょうから、佐村河内氏にとって有利な証言がでてくるとは思えず、共同著作者であることの認定は、困難ではなかろうかと思います。
なお、補足ですが、一連の名曲を後世に残そうと思うのであれば、心ある方が文化庁に対して裁定制度を使って補償金を国庫に納め、演奏活動やCD制作活動をしていくことになるかと思います。