最近、「退職代行」というサービスが話題になっていますね。
「退職代行」とは、深刻な労働力不足を背景とした長時間労働や、パワハラ、その他の事情により、退職したいのに退職できないという方のために、退職に関する様々な交渉を行うというサービスです。
私は弁護士として、退職代行サービスや、内定辞退サービス、会社役員辞任サービスを提供する者ですが、日々ご相談を受ける中で、
「広告に即日退職できると書いてあったから、非弁業者(=弁護士でない業者)に退職代行サービスを依頼したのに、結局即日退職できなかった!」
というお声を聞くようになりました。
そこで、今回は、「即日退職」に関する誤解について、ご説明いたします。
退職を申し出たその日に、雇用契約を終了できるか?
そもそも即日退職という言葉は、法律用語ではありません。
ただ、即日退職という言葉を文字通りに解釈すれば、
「即日で退職する」=「退職を申し出たその日に雇用契約を終了させる(会社から籍を抜く)」
といった意味合いになりそうです。
では、従業員が「退職を申し出た当日に雇用契約を終了させる」ことができるのは、どのような場合でしょうか。
それは、会社が即日退職に同意した場合のみです。
つまり、会社が
「今日辞めるなんて認めない!」
と言って、即日退職に同意してくれなければ、従業員としては、即日退職はできません。
なお、会社が即日退職を認めない場合であっても、(即日ではないですが)退職自体は可能です。
民法第627条第1項
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」
例えば、月給制の正社員の場合、2019年5月1日(水)に退職を申し出れば、同年5月15日(水)には退職できるのです。
しかしながら、会社の同意なくして、「即日」で辞職することはできません。
「明日から出社したくない」…これは可能?
ここまでご説明した通り、「即日退職」=「退職を申し出た当日に雇用契約を終了させる」のは、会社の同意がない限り、できません。
それでは、(会社から籍が抜けるのは2週間後でもいいとしても、)退職を申し出た翌日から出社せずにすむでしょうか。
場合によっては可能です。
例えば、退職前の2週間について年次有給休暇(有給)を取ることで、退職を申し出た翌日より出社せずにすみます。
ただし、突然出社しなくなった場合、引継ぎ等の問題が生じ、会社から損害賠償請求される可能性もありますので、十分注意が必要です。
以上、「即日退職」に関する誤解について解説しました。
なお、弁護士ではない業者による「退職代行サービス」は、弁護士法違反の恐れのあるものも多いため、弁護士にご相談されることを強くお勧めいたします。
「辞めたくても辞められない…」とお悩みの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください!
著者:センチュリー法律事務所 小澤亜季子(東京弁護士会所属)
依頼者の皆様の不安を少しでも取り除けるように、お気持ちに寄り添い傾聴すること、なるべく早く具体的な解決策を提案すること、そのための費用がいくらかかるのかを明確にすることを心がけております。
プロフィール:http://century-law.com/lawyers/akiko_ozawa