育休取得予定の主任を降格…これってマタハラ?

先日ある女性が掲示板に、次のような相談を投稿していました。

4月から主任に昇格したばかりのAさんが、育休を取得することになり、Bさんが主任の業務を引き継ぐことになったのだそう。

Aさんの仕事を一部代行することになった投稿者は、「それならAさんを降格して、Bさんを主任にしたら?」と進言。すると、Aさんから「それはマタハラだ!」と厳しく批判を受けたのとのこと。

 

■投稿者は降格させないことに不満

投稿者が上司に相談するも、「育休を理由に降格することはできない」と告げられたといいます。投稿者は体力仕事を引き継いでおり、「周りに迷惑をかけているのに主任にしがみつくAさんが信じられない」「仕事ができないのに地位が保全されるなんておかしい」と不満の声をあげています。

一方掲示板ではこの投稿者に対し「八つ当たり」「上司の対応が正しい」など、批判的な声が多いようで、意見がぶつかっています。

仮に投稿者の主張通りAさんが降格となった場合、認められるのでしょうか?センチュリー法律事務所の小澤亜季子弁護士に見解を伺いました。

 

■降格は認められる?

「妊娠を理由として、主任を降格した場合、マタニティーハラスメント(マタハラ)にあたり、違法です。男女雇用機会均等法9条3項は、「①妊娠・出産等の事由を理由として、②不利益な取扱いをすること」を禁止しています。

この①「妊娠・出産等の事由」には、妊娠したことや出産したことの他に、軽易な業務への転換を請求したことも含まれます。また、この②「不利益取り扱い」には、解雇や雇止めの他、降格させることや昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うことも含まれます。

なお、「理由として」とありますが、原則として、妊娠・出産等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合には、「妊娠・出産等の事由を『理由として』不利益な取り扱いをした」と判断されます。

したがって、本件において、Aさんが妊娠し、業務の一部を他の従業員に任せたことを理由として、Aさんを主任から降格した場合、男女雇用機会均等法が禁止する不利益取り扱いにあたり、違法です。」(小澤弁護士)

 

■損害賠償請求を受けることも

「平成28年の男女雇用機会均等法改正によって、会社は、マタハラ防止措置を講じることも義務付けられました。

例えば、同僚がAさんに対して「自分だけ軽易な業務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ」などの嫌がらせ的な言動を繰り返しまたは継続的に行い、これに対して会社が防止措置を講じない場合、Aさんは、マタハラ加害者たる同僚に加えて、会社に対しても、損害賠償責任を追及できる可能性があります。

Aさんと同僚間のようなトラブルは、妊娠した労働者が、つわりなどの体調不良のため従前通り働くことができず、周囲の労働者の業務負担が増大することによって生じることが多くみられます。会社は、Aさんへのマタハラ防止措置を講じるとともに、周囲の労働者の業務負担等にも配慮することも重要です。」(小澤弁護士)

投稿者のように「育休」について「ずるい」「迷惑」と考えている人は少なくないと思われますが、仮にその言葉を何度も育休取得者に投げかけた場合、損害賠償請求を受けることがあるようです。また、そのような事実を知りながら、防止装置を講じない会社にも同様の責任が発生するとのこと。

少子高齢化が進むなかで、子供は貴重で将来の日本を担う存在。そしてその子供を育てる母親も、大事にしなければならないということでしょう。

マタハラ防止装置はもちろん、育休によって不満が出ないよう、企業は仕事の割り振りを考える義務があります。仮にAさんと同じような弱い立場に追いやられた場合は、マタハラ問題に強い弁護士への相談を検討しましょう。

 

*取材対応修弁護士:センチュリー法律事務所 小澤亜季子(依頼者の皆様の不安を少しでも取り除けるように、お気持ちに寄り添い傾聴すること、なるべく早く具体的な解決策を提案すること、そのための費用がいくらかかるのかを明確にすることを心がけております。)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

*画像はイメージです(pixta)

小澤 亜季子 おざわあきこ 弁護士

センチュリー法律事務所

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