新入社員の皆さんは現在社員研修を受けている真っ最中ではないでしょうか。場合によっては、数日間泊まりこみで、軍隊的に厳しく指導されることもあるようです。
当然そのようなことは内定の段階で説明を受け、承知の上で入社するわけですが、なかにはネットの評判や、いざそうなることへの不安感などから、4月1日になり、「行かない」と辞退する人もいると聞きます。
■採用コストが無駄になる可能性
仮に内定が出ていながら、4月になって出社拒否し、退職の意志を示した場合、企業は研修費用や各種社会保険、さらに採用にかかるコストなどをすべて無駄にすることになります。
当然、その者に損害賠償請求などを行いたいところ。そのようなことは可能なのでしょうか?銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士に見解を伺いました。
■当該者に損害賠償請求できる?
「いつの時点で労働契約が成立するにもよりますが、通常は採用内定通知の時点で、入社予定日を就労の始期とする解約権留保付き労働契約が成立していると判断されるというのが判例の立場ですので、出社日初日に『辞める』というのは、労働契約の不履行となります。
会社としては、改めて費用と時間をかけて代わりの人を募集しなければならず、それにかかる時間や費用を金銭的に評価し、その者に対して損害賠償請求することは可能です。
企業としては、その者に対して就業するよう説得をするか、再募集の必要性があるのかなど、法的措置をとることを防ぐことができるのかどうか、検討するということになります。」(小野弁護士)
入社日初日に「行かない」と言い出すのは、損害賠償請求の対象になる可能性が高いようです。内定が出た場合は、予定通り入社するようにしましょう。
そして企業は、そのようなことを防止するよう、内定者との連絡を密にとり、動向を逐次チェックすることが重要かもしれません。
*取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)
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