昨今は飲食業界などを中心に人手不足が進み、一部店舗では深夜営業の取りやめや、営業時間の短縮などを余儀なくされています。
もちろん飲食だけではなく、サービスや製造業などありとあらゆる業界で人員確保が難しくなっており、1人にかかる仕事の負担が重くなっているようです。
■環境が悪くなると職場に悪影響も
職場の環境が悪くなると、必然的に退職者が出てしまうもの。また、辞めるまではいかなくとも、体調を崩し、休みがちになる社員もいることでしょう。
本来なら当日欠勤などを繰り返せばペナルティの対象となり、場合によっては解雇を迫ることもできるはず。しかし、人員が少ないという理由で、「大目に見る」こともあるようです。
そうなると、真面目に出勤している社員にとっては、自分にしわ寄せがくるうえ、どこか不公平感が拭い去れないだけに、面白くないもの。
場合によっては「辞めさせたい」と思うかもしれません。そのようなことは可能なのでしょうか? パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に見解をお伺いしました。
■同僚から会社にクビを促すことはできる?
「勤務態度の悪い社員について“勤務態度が悪いから解雇すべき”と会社に伝えること自体には、特に法律上の問題はないと思います。
もっとも、解雇、つまり雇用契約を解消するかどうかは会社の判断ですし、“勤務態度が悪いこと”が事実であったとしても、“解雇すべき”と会社に伝えることによって、当該社員との間でトラブルが生じる可能性もあります。
会社に伝えるのは、“当該社員の勤務態度”にとどめ、処分すべきであるとか、どのような処分をすべきであるとかは、言わないほうがよいでしょう。当該社員をどのように扱うかについては、会社の判断に委ねるほうが賢明ではないかと思います」(櫻町弁護士)
法律的には「会社にクビを促すこと」はできるようですが、実務的に見ると勤務態度の悪さを指摘するまでにとどめたほうが無難であるようです。
■経営者が納得すれば雇用し続けられる?
「契約当事者である会社(の経営者)に解雇する意思がない以上は、同僚とはいっても契約当事者ではない社員の希望が通らなくても、それはやむを得ないことだと思います。
とは言いましても、いわゆる“問題社員”がおり、その社員によって他の社員の業務効率が悪化していたり、モラルが低下していたりという状況が生じていれば、経営者としても何らかの対処が必要になってくるでしょう。
ですから、同僚が会社側に伝える場合には、問題社員の“勤務態度”に加えて、それによって“どのような弊害、悪影響が職場に生じているか”に言及することによって、会社側に“きちんと対処する必要がある”と認識させることが重要と思います」(櫻町弁護士)
契約当事者が同意しないかぎり、社員側から解雇を促すことはできないようです。もし同僚が欠勤を繰り返すなど、勤務態度が著しく悪く、「辞めてほしい」と考える場合は、経営者に勤務状況を報告し、「納得させる」しか道はないのですね。
*取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)
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