会社のルールを定めた就業規則。その内容は社労士や顧問弁護士監修のもと決められることがほとんどで、大筋ではどこも「似たり寄ったり」といわれますが、細かい部分では会社によって違いがあるようです。
就業規則の内容は逐次変更できるもので、改訂する場合、社員に「内容を確認して承諾の署名・捺印をするように」と指示されることがあります。
納得できればいいのですが、社員にとって異論を唱えたくなるような変更も。しかし、「クビになる」という恐怖心から拒否できず、渋々受け入れている人もいるのが現状です。
■拒否した場合嫌がらせ受けることも?
就業規則の変更については、「嫌なものは嫌」として、敢然と「拒否」する人もいます。非常に勇気のある行動ですが、この場合経営サイドから嫌がらせや減俸・左遷などの人事を受けることもあるようです。
仮にこのようなことがあった場合、不当性を訴えることはできないのか。そして、就業規則の変更について社員は拒否する権利を有していないのか。
ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解をお伺いしました。
■社員は就業規則の変更を拒否できる?
「就業規則については、労働契約法で以下のように定められています。
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
つまり、全員の合意を得るか、不利益でも「合理的なもの」であれば、変更可能であるし、効力は及ぶということになります。執拗に合意を迫るということは「合理的」ではないと判断されると会社が認識しているということかもしれません。
いずれにせよ、合意するか否かは労働者の自主的判断ですから、拒否を理由に「嫌がらせ」「減俸」などもっての外です。
具体的には拒否と嫌がらせの因果関係等の立証が問題になるでしょうが、慰謝料請求等は理論上可能を思われます。
もっとも、このような時こそ、きちんとした労働組合として団結が必要であり、かつ、それではね除けることはできるのだと思います」(森川弁護士)
就業規則の変更については、それが社員にとって不利益であったとしても合理性があれば可能というのが、法律の解釈であるようです。まず、変更されたものが労働契約法第十条の要件を満たしているか、確認してみましょう。
要件を満たしていないと感じた場合は、労働者同士の団結や弁護士への相談などが有効な手段となってくるようですね。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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