ある日、家に帰ってみたら妻が荷物を持っていなくなっていた。また、旦那が行方をくらまし、連絡が取れなくなってしまった。そのようなケースを一般的に「蒸発」と呼びます。
蒸発が発生してしまった場合、「された側」は途方に暮れてしまいます。離婚しようにも連絡がとれませんし、慰謝料や養育費の交渉もできません。
パートナーに蒸発されてしまった場合、どのようにして離婚や慰謝料請求を行えばいいのでしょうか? 高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。
■蒸発されてしまった場合どうやって離婚の手続きをとる?
「妻が突然家を出て行ったということだけでは離婚事由としては認められません。
離婚事由として認められるためには、「悪意の遺棄」と言えるとき(民法770条1項2号)、妻の生死が3年以上明らかではないとき(同項3号)、別居が5年以上続いており、それ以外の事情からも婚姻を継続し難い重大な事由ありと認められるとき(同項5号)です。
なお、“悪意の遺棄”とは、婚姻関係の破たんを目論んで正当な理由なく別居する場合などです。
妻の居場所や連絡先が分からない場合には離婚協議をすることは出来ませんが、最終的には「公示送達」という方法によって、裁判上離婚をすることが出来ます。
妻が子どもを置いて出て行ったような場合には、妻は親権者としてふさわしくないことは明らかなので、夫が親権者に指定される可能性は極めて高いでしょう。
養育費については、仮に裁判所によって具体的な金額を決めてもらったとしても、妻の居場所も連絡先も分からない以上は、養育費を妻から支払ってもらうことは事実上不可能でしょう」(理崎弁護士)
「悪意の遺棄」が認められた場合は、「公示送達」という方法で裁判上離婚することができるそうです。ただし養育費については、居場所や連絡先がわからないので、裁判所で金額を決めても請求できないとのこと。
パートナーであっても、相手の動向をある程度注意する必要がありそうですね。
*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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