働く上で「賃金」を重要視しているという人も多いかと思います。
賃金が増えれば嬉しいですが、成果主義制度を採用している企業では、成果が出せていないと評価された場合、給料が減ることもあるようです。
賃金が減るだけでも悲しいですが、中には賃金が減ったとしても、職務内容が全く変わらないというケースもあるようです。
今回はこういったケースの賃下げが許されるのか、また、賃下げはどういった場合に許されるのかについて解説します。
■成果が出せず賃下げ…問題ない?
成果が出せなかったからといって、賃金を下げることは問題があると考えます。賃金は労働条件ですから入社時の労働契約や就業規則・労働協約によって決まっていたはずです。
そもそも労働契約・就業規則・労働協約で成果主義による賃下げを認めていないのであれば、労働契約違反・就業規則違反・労働協約違反ということになります。
たとえ労働契約・就業規則・労働協約で出来高払い制が定められている場合でも、使用者は、労働時間に応じた一定額の賃金を労働者に保障する必要があります(労働基準法27条)。労働条件、特に賃金は、労働者が人たるに値する生活を営むために必要不可欠であるからです。
例えば、タクシー運転者の場合、固定給+歩合給(出来高払)制やオール歩合給制が採用されているかと思いますが、1時間当たりに換算した賃金額が都道府県ごとに定められた最低賃金額を下回らないようにしないといけないとされています。
■どんな時に賃下げが許される?
年俸制の場合、労働契約・就業規則・労働協約を変更する場合、懲戒で減給処分にする場合等が考えられます。
年俸制とは、「1年」を単位として労働者の報酬総額を決定する賃金制度です。年俸制の場合、労働者は成果によって翌年の報酬総額が決まるという条件で採用されていますので、当然賃下げもあり得るということになります。
労働契約・就業規則・労働協約の変更によって給与体系を成果主義へ変更する場合も考えられます。
ただし、労働契約や労働協約を使用者側が勝手に変更することはできません。
また、就業規則の変更によって給与体系を成果主義へ変更するとしても、就業規則の内容を労働者の不利益に変更する場合、合理性が必要とされています。
労働条件の不利益変更に合理性が認められるかどうかは
(1)労働者の受ける不利益の程度
(2)労働条件の変更の必要性
(3)変更後の就業規則の内容の相当性
(4)労働組合等との交渉の状況
(5)その他の就業規則の変更に関係する事情
といった点から総合的に判断されます。賃金は労働者にとって重要な労働条件ですので、不利益に変更するには高度の必要性が必要です。
労働基準法第91条に「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」という限界はありますが、懲戒処分で減給という場合もあります。懲戒処分は、職場内の秩序を乱した従業員に対するペナルティです。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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