野球はプロ・アマ問わず根強い人気がありますが、プレー中だけではなく、観戦中にもファウルボールが当たるなど、怪我のリスクは潜んでいます。
硬式ボールは非常に硬く、失明といった重大な事故になっているケースもあるようです。
このような野球場での硬式ボール衝突による事故は、プロ野球などで年に数件発生しているようですが、責任は誰に発生するのでしょうか? 打った選手なのか、球団なのか、球場なのか。法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。
■打者の責任は?
まず、打った張本人である打者に責任は発生するのでしょうか?
「安全設備が整っていると考えられる球場で普通にプレーした結果ということであれば原則として責任は負わないと考えます。
ただし、観客がグラウンドに立ち入っていたような場合、打球がその観客に当たって怪我をさせる危険性があるわけですから、そのことに気付いた打者としてはプレーをストップする義務があります。
それにもかかわらず、打者がその義務に違反してプレーを継続し打球がその観客に当たった怪我をさせたような場合、生じた損害について責任(不法行為責任)を負うと考えます」(冨本弁護士)
普通にプレーしている場合には、打者に責任は発生しないようです。
■球団運営会社の責任は?
次に球団運営会社の責任はどうなるのでしょうか?
「打者が上記の不法行為責任を負う場合、球団運営会社はその打者を使用していた者として責任(使用者責任)を負うと考えます。打者に責任がない場合でも、球団運営者に責任が生じることは考えられます。
球団運営者は、観客との間で野球観戦契約を締結していると考えられますが、信義則上観客の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負います。球団運営者がこの義務に違反したことによって観客が怪我をした場合、球団運営者は観客に生じた損害について責任を負うと考えます。
また、球団運営者は、球場所有者・管理者から球場を借りて占有しているといえます。球場の安全設備に欠陥があって事故が発生した場合、球団運営者は球場の占有者としての責任を負う可能性もあると考えます」(冨本弁護士)
こちらは、責任を負う可能性があるようです。
■球場管理者・球場所有者の責任
最後に球場管理者・球場所有者の責任はどうでしょう?
「球場管理者・球場所有者は、球場の安全設備に欠陥があって事故が発生した場合、球場の占有者・所有者としての責任を負うと考えます。
実際に裁判になった事件として、平成22年8月21日、札幌ドームで日本ハム対西武戦を1塁側内野席で観戦していた女性がファウルボールの直撃を受けた事案があります。
被害者は、試合を主催し札幌ドームを占有していた日本ハムファイターズ、指定管理者として札幌ドームを占有していた札幌ドーム、札幌ドームを所有していた札幌市に対し裁判を起こしていました。
この事案において、被害女性は、プロ野球の試合に小学生を招待するという球団運営者の企画によって、座席を確保し観戦していました。
札幌高裁は、札幌ドームの安全設備等に欠陥があったとは認められないが、球団運営者には、野球や野球観戦に不慣れな者に対して危険性の低い座席のみ選択できるようにするか、危険性の高い席と低い席があることを知らせる義務があったとし、それにもかかわらずそうしなかったとして球団運営者の責任を認めました(平成28年5月20日札幌高裁判決)」(冨本弁護士)
球場運営・管理者の場合は、実際に責任をとるよう求める判決が出ているようです。
プロ野球などで使われている硬式ボールは非常に固く、打ちどころが悪く死に至った事例もあります。観戦の際には十分注意するようにしましょう。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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