先日、ある企業がタバコを吸わない社員に対し、6日間の休暇を与える方針を打ち出したことが話題になりました。
制度の目的は、社員の禁煙促進やいわゆる“タバコ休憩”を取る社員と取らない社員の公平性を保つことなどであると思われますが、喫煙者としては納得がいきません。給与はともかく、労働条件は同じであるべきのようにも思えます。
このように非喫煙者だけに特典を与えるような制度は、問題ないのでしょうか? エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。
Q.非喫煙者に特別休暇を付与…これは違法ではありませんか?
A.違法とはいえないと思われます。
「結論からいうと、法律上明確な問題はないと考えられます。労働者の待遇については労働基準法3条が次のように規定しています。
「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」
まずこの中の「喫煙者である」という事情は、「労働者の国籍、信条、社会的身分」に直接的には該当しないため、その差別的取扱いが合理性を伴い、かつ公序良俗(民法90条)に反するなどしない限り、違法とされるリスクは低いと思われます。
そこで、本件でも非喫煙者にのみ6日間の有給休暇を与えることが公序良俗に反するかどうかを考えてみましょう。
喫煙者は、非喫煙者とは異なり、タバコ休憩として職務を離れている時間が結果的に長く、それらを換算した時間数に相当する日数分の休暇を与えることは、合理性を伴っていると考えられます。
従業員間の労働時間の公平性を保つために、年次有給休暇として喫煙者がタバコ休憩をしている時間1年分を下回る程度の日数を与えることは、公序良俗違反とまではいえないでしょう。
さらに、喫煙者は喫煙をやめることによって6日間の有給を取得でき、喫煙者自身の意思によって有給の取得を放棄し、喫煙による離席という選択ができることからも、やはり不合理な差別とまではいえないでしょう。
そのため、非喫煙者にのみ有給を6日間追加で与えることは公序良俗に反するものではなく、法的には許されることになりそうです」(大達弁護士)
このような動きが広がれば、喫煙者が減るかもしれませんね
*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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