昨今は「完全紹介制」「会員制」の飲食店が増加しています。情報化社会の中で敢えて住所などを公開せず、ひっそりと営業することで、「存在価値を上げたい」「来てくれるお客様を大切にしたい」などの狙いがあるようです。
当然そのような店舗はお客様に対しネットに住所や評価を書きこまないよう求めるわけですが、中にはそれを無視する形で飲食店の評価サイトに投稿する人もいるようです。
店側としては情報の削除を求めるのは当然のことでしょう。書き込んだ人間が断り続けるのなら、損害賠償などの法的措置に出ざるを得ません。
しかし、仮に提訴したとしても、訴えが認められない可能性が高いというのです。本当でしょうか? 桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に真相を聞いてみました。
Q.完全紹介制の情報を勝手にサイトに投稿されたうえ、削除要求にも応じない…損害賠償は可能ですか?
A.名誉毀損や営業に支障がでた場合でない限り、損害賠償は認められないものと思われます。
「飲食店の情報についてサイトに掲載されたことについて損害賠償を求める裁判はいくつかなされておりますが、公開されている裁判例を見る限りでは名誉棄損等が伴う場合でなければ基本的には損害賠償を認めていません。
紹介制の店舗がサイトに掲載されたことについて損害賠償を求めた裁判(ニュースなどでも取り上げられました)についても、店舗側の訴えが否定されています。
同判例で裁判所は、店舗情報について公開するかしないかについては営業権の一つとして認められているものの、店舗情報がそのサイト以外では公開されていることや、店舗情報の掲載が名誉棄損等を伴うものではないことを理由として、店舗情報の公開を違法とは認めませんでした。
裁判所が上記判断を行ったのは、サイト運営者の表現の自由や受け手の知る権利を重視しているという理由からだと考えられます。
もっとも、店舗情報が完全非公開であり、かつ情報開示により実際に営業に支障が生じたという場合であれば、損害賠償が認められる余地はあるでしょう」(大窪弁護士)
過去の裁判事例を見る限り、名誉毀損や情報開示によって営業に支障が生じたというケースでない場合、損害賠償請求などを行ったとしても、認められる可能性は低いようです。
*取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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*amadank / PIXTA(ピクスタ)
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