実家を出た息子の私物を売却…家族だったら問題ない?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

新年度が始まり、進学・就職のためお子さんが一人暮らしを始めるご家庭も多いと思います。

部屋に余裕があれば、子どもが残していった荷物をそのままにしておいて問題ありませんが、そうでない場合は、子どもの荷物でも不要なものは捨てたいと思うところではないでしょうか。

実際にインターネット上では、子どもの私物であるカードをネットオークションで売却しようとしていたという例があり、話題になっていました。(参考:『ねとらぼ』)

親であれば子どもの荷物を捨てたり、売ったりすることに問題が無いのか、民事上・刑事上の観点から解説してみたいと思います。

 

■1.子ども(成人)の所有物を子どもの代理として親が売った場合

参考の記事の事例からは離れますが、これが基本形です。親が、子どもから「代理人として物を売って」と依頼され、親が「代理人として売ります」と表示したのであれば、当然、売買は有効です。

売主は所有者である子どもです。売買に代理人を使った、というだけです。何も違法なことはありません。

この記事の事例では、子どもからの依頼、つまり、代理権の授与がないようです。しかも、親が代理人であることも表示されていません。通常の代理人による売買という理屈では正当化できません。

このことを踏まえて、さらに考えていきます。

 

■2.未成年の子どもの所有物を子どもの代理として親が売った場合

息子さんは、カードを売ることを母親に依頼してはいなかったようですので、参考の記事の事例は、2.のような場合ではないかと思われます。

ですが、未成年者の親(親権者)は子どもの財産を管理・処分する広い裁量をもっています(民法824条)。子どもの依頼がなくても自動的に子どもの代理ができる状態です。

なので、子どもの依頼がないのに「子どもの代理です」と言って売買をした場合であっても、親は子どもの代理人として売っただけ(売主はあくまで子ども)ということになります。

よって、子どもの所有物は、代理人による売買によって買主の所有物になります。違法ではありません。

この場合、子どもは(本人の知らない間ではあるものの)売主になるので、売買代金を受け取ることはできます。しかし、売られたものを取り返すことは難しいでしょう。

ただ、たとえ代理する権限があっても、「代理です」と表示しなければ、子どもの所有物は子どもの所有物のままです。

この記事の場合、商品説明などからも母親は息子さんの“代理”だということは読み取れませんから、「代理です」という表示はないと考えられます。よって、子どもは、買主に対して、買ったものを返すよう請求することができます。

ですが、事情を知らない買主としては、知らない事情に基づいて買ったものを取り返されたのではたまりません。そうした買主を保護するため、即時取得というルールが用意されています(民法192条)。

即時取得のルールは、「この商品は売主の所有物ではない」ということを知らず、気付くこともできなかったという買主は所有権を取得することができる、というものです。

逆に、他人の所有物だと気付くことができるような場合には、所有権は取得できません。

先ほどの記事の場合だと、息子さんのカードを勝手に出品したということは出品者の説明から分かります。なので、即時取得は成立しないと思われます。よって、落札者は所有権を取得できず、息子さんは落札者に対してカードの返還を請求できます。

なお、即時取得が成立してしまった場合でも、売られたものを取り戻せる可能性はあります。

盗難の場合、所有権は元の所有者(子ども)にまだ残っているという理屈で、買主に返還を請求することが可能です。ただし、売買されてから2年以内に請求しなければいけません(民法193条)。また、買主から弁償を請求されたら支払う必要があります(民法194条)。

 

■3.成年・未成年を問わず、子どもの所有物を親自身が売主となって売った場合

他人の所有物を売るという契約、いわゆる『他人物売買』も、有効な契約です(民法560条)。一見奇妙ですが、『買主を確保した上で仕入れをする』という場合を考えれば、他人物売買も合理的な方法です。

とはいえ、当然のことですが、他人物売買の契約が締結されても、所有者には何の影響もありません。息子さんのカードという「他人物」を、母親が勝手に「売ります」と言ったところで、息子さんがカードの所有権を失うことはありません。

なので、勝手に売買の対象にされた物が、勝手に買主に引き渡されたとしても、所有者は返還を請求できます。

ただし、ここでも即時取得のルールが適用されて、買主が所有権を取得できる可能性があります。即時取得が成立してしまった場合でも取り戻せる可能性があることは既に述べたとおりです。

さて、以上は「カードは誰の所有物になるか」という民法上の問題でした。

 

高野倉 勇樹 たかのくらゆうき 弁護士

あすみ法律事務所

東京都港区西新橋1-18-6 クロスオフィス内幸町901

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