デジタル時代のいま、故人が家族に知られずに株やFXをやっていた場合もあり、遺族が知らない間に負債が膨らむ場合も。
故人になったことを証券会社などに知らせて解約できればいいのですが、ネット証券系でのやりとりは主にメールや会員用の画面で通知されます。
時折郵送で確定申告関連の書類が送られてくることはあっても、家族が「なにかの勧誘DMかしら」と大して気にもかけていなければ、契約解除もしないまま放置されてしまうことになるのです。
では、契約者が故人になってから為替が急激に変動して、FX取引の追加証拠金が派生した場合はどうすればいいでしょうか?
高島総合法律事務所の理崎智英弁護士にお聞きします。
■家族が知らない故人のFX取引…死後に発生した負債を遺族が払う義務はある?
「FX取引の追証の支払義務も相続債務になるので、死後に発生したものであっても、生前の取引に基づくものであれば、故人の相続人は、原則として支払い義務を負うことになります」
金額が巨額で故人の遺産でも払いきれないほどの場合、相続放棄をすれば遺族は逃れることができるのでしょうか?
「熟慮期間内(相続の開始を知ってから3ヶ月以内)に相続放棄をすれば債務を免れることが出来ます。
ただし、すでに遺産を相続していたり、遺産を処分してしまっているような場合には“法定単純承認”となりますので、たとえ多額の債務があることが判明したとしても相続放棄することは出来ません」
ちなみに、このようなケースで裁判になったケースは、理崎弁護士が調べたところ、現時点ではなかったそうです。
それでも、証券会社が追証の支払いを求めて遺族を訴えるケースは十分に考えられるそうです。高齢化社会の今、亡くなる人が生まれる人の数を上回っているので、今後は証券会社にとっても大きな問題になりそうです。
■故人の負債トラブルを避けるためにはどうするべき?
では、こうしたトラブルを避けるために遺族はどうするのがベストでしょうか?
「被相続人の資産のみならず、負債についてもきちんと調査をしたうえで、被相続人の遺産を相続するのか、それとも相続放棄をするのかを決める必要があるということです。
熟慮期間内に調査が終わらないような場合には、裁判所に申請をすれば期間の延長が認められます。
この点、ネット上でのFX取引等について相続人は把握していない場合もあるでしょうが、被相続人の使用していたパソコンやスマートフォンの内容を確認するなどして(場合によっては専門の業者を利用するなどして)、被相続人の生前の取引について最大限の調査をすることが重要です」
できれば生前から契約して行っていることや、会費を払っていることなどは全て把握しておくのがベストですが、若くして突然死というケースもあり得ます。
手続きなど複雑なことについては弁護士さんに相談して、もっとも安全な策を選択するのがベストかもしれません。
*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)
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