ときおり、大麻を所持していた疑いで逮捕されるニュースを耳にしますよね。著名人が大麻を所持していたとして逮捕される事案は、珍しくないものになっています。
大麻は、大麻取締法により、都道府県知事の免許を受けた者以外による所持が禁じられています。
ところで、大麻以外には、どのようなものが所持を禁じられているのでしょうか。
■所持が禁止されるには合理的な理由が必要
大麻以外にも、覚せい剤などの薬物、ナイフ、児童ポルノなどを所持していたといった事件が、よく報道されています。
人には物を所持する自由がありますから、法律で所持を禁止するには、社会に受け入れられる理由が必要です。そのため、所持を禁止されている物の種類から、禁止されている理由がわかるものがほとんどです。
所持に刑事罰を与えていることから、それぞれの法律では、所持が禁止される物について、ほとんどの場合、具体的な定義を定めています。
今回は、法律上の用語を使って、どのような物の所持が禁止されているか、ざっくりと分類してあげてみます。
所持を禁止するときには、特定の目的を持った所持を禁止する場合や、許可等を得ない所持が禁止される場合などがあります。
これは、一般には所持を禁止すべき物であっても、医療や学術研究、または適切な管理の下では有効に活用できたり、必要不可欠な場合が多くあるからです。
他方で、所持が禁止される物を製造する道具や原料の所持も禁止される場合もあります。これは、所持が違法とされる場合を広く捉えるものといえます。
以下、所持が規制・禁止されているものをご紹介します。
■乱用される薬物
薬物乱用は社会だけでなく、使用者へもその悪影響が大きいことから、各種薬物に法規制が行われています。他方で、薬物は医療や学術研究へ有用であることから、許可等を得たときには所持が認められています。
「大麻」「向精神薬」「覚せい剤」「あへん」などの所持が禁止されています。
医薬品は、医療へ有用ではありますが、その反面、乱用すればその弊害は明らかです。
そのため、許可等のない「指定薬物」の所持が禁止されています。危険ドラッグ(違法ドラッグ)と呼ばれるものは、この規制により、所持が禁止されています。
■毒など危険な物
危険の薬品として、「特定毒物」「サリン等」の所持が禁止されています。
「サリン等」の所持を禁止する法律は、平成7年に成立しており、その頃宗教団体によって起こされたテロ事件においてサリンが使用されたことがきっかけとなり、制定されました。
それまでは直接的に規制する法律が存在していませんでした。刑罰法規は、明確性が求められることから、事前に抽象的に規制をするということが難しく、今後もこのような事後的な対応になってしまう事例が生じる可能性は残されているといえます。
また、病気の原因となる、「一種病原体等」「家畜伝染病病原体」も、その危険性から所持が禁止されています。
■凶器、武器、兵器
「鉄砲又は刀剣類」の許可等のない所持も禁止されています。
また、刀剣類とまではいえない「刃物」についても正当な理由のない携帯が禁止されています。武器ではない道具についても、その取扱いが制限されているのです。
爆発物などの危険物として、「火薬類」「爆発物」「火炎びん」の所持も禁止されています。
これらの以上に危険な兵器も、取り締まる法律があります。
「対人地雷」「クラスター爆弾」「生物兵器又は毒素兵器」「化学兵器」の所持が禁止されています。
更には、一般人はあまり関わりませんが、原子力にかかる物についても、所持が禁止されています。これは、その物の持つ能力や危険性から、取扱いを国として管理する必要が認められるからであるといえます。
具体的には、「原子核分裂等装置、放射性物質」「核燃料物質」「放射性同位元素」の所持が禁止されています。
■わいせつな物
昨今、報道されることが多くなってきた、「児童ポルノ」はその所持が禁止されています。
平成26年改正前は、他者への提供等の目的による所持が禁止されていましたが、改正により、自己の性的好奇心を満たす目的による所持も禁止され、処罰範囲が拡大されました。
「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物」については、従前から刑法により所持が禁止されています。
■生活上の注意
そのほかにも、所持を禁じる法律はいくつかありますが、日頃生活をしているなかで所持が禁止されているものを手に入れる機会は多くありません。
街中のお店で手に入るものであって、必要な理由があって所持しているものであれば、基本的には法律に触れる心配をすることはありません。
薬局で買った薬が違法な薬物ではないかとか、観葉植物として購入した植物に違法な病原体や薬物が含まれているのではないかと心配していては、日常生活をおくることもままならなくなってしまいます。
しかし、最近ではインターネットで違法な薬物が簡単に入手でき場合もあり、特段の心理的抵抗なく購入したり輸入してしまう場合があります。
また、児童ポルノについても、SNSなどのインターネットで違法とは考えずにやり取りしている例が見受けられます。
万全の対策というものは難しいですが、ニュースなどで報道されている事件について、自分のまわりに起きる可能性がないかどうか、考えてみると良いと思います。
*著者:弁護士 荻原邦夫(りのは綜合法律事務所。刑事事件を主に取り扱っています。お客様に落ち着いていただき、理解していただけるよう対応します。)
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