酒気帯び運転で逮捕された女性が、「ノンアルコールビールを15本飲んだ」と容疑を否認し注目されています。
この言葉の真偽は定かではありませんが、酒を飲みたいけど飲めないという状況の時にありがたいのがノンアルコール飲料。運転や体調などの事情でよく飲む方もいるのではないでしょうか。
それではこのノンアルコールビール、勤務中に飲むのはアリ? ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお聞きしました。
■ノンアルコールビールでの懲戒は法的には難しい
勤務中にお茶やジュースなどを飲むことは多くの職場で認められていることですが、これらの代わりにノンアルコールビールを飲むことで懲戒などを受ける可能性はあるでしょうか?
「ノンアルコールビールは清涼飲料水なので、そのこと自体で懲戒は法的に難しいと思います」(森川弁護士)
仕事中の飲酒自体は、法的には禁止されているものではありません。とはいえ就業規則で勤務中の飲酒を禁止している会社はありますし、明記されていなくても勤務態度や社内秩序の点からこれが理由で懲戒となる可能性もあります。
しかし、ノンアルコールビールならジュースと同じなので、懲戒理由とはなりえません。
■“常識”は法律や就業規則ではない
会社でのノンアルコールビールが法的にはOKだとしても、本物のビールを飲んでいると誤解されたり、ビールのようなものを会社で飲むことがふさわしくない行為として注意されたりするかもしれません。この注意には従わなければならないのでしょうか?
「見た目がビールなので紛らわしく、その意味で、仕事の場にふさわしくないという“常識”はありうるかと思います。
しかし、常識が法律や就業規則ではない以上、争う余地は当然にあるでしょう。つまり、法律で合法である、就業規則で規定されていない、という主張は可能ですし、それは通り得るでしょう。
逆にいうと、ノンアルコールビール=清涼飲料水を職務中飲んではいけない、という合理性ある理由が認められる職業・職場・環境(運転など)など以外は、現時点では常識がどうであろうとノンアルコールビールの飲用は合法であるということになるかと思います」(森川弁護士)
常識は必ず守らなければならない決まりではありません。かといって“法律がすべて”というわけでもないのが現実の難しいところ。バランスを取りながら快適に仕事にあたりたいものです。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)
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*Natalya Okorokova / Shutterstock
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