コンサートに行ったら混み過ぎで熱中症に…治療費は請求できる?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

ロックバンド「ONE OK ROCK」が4月8日に幕張メッセで開催したコンサートで、熱中症や過呼吸などの体調不良を起こす観客が続出したそうです。50人以上が症状を訴え、21人が病院に搬送されました。

このように、コンサート会場で熱中症や怪我などの事故があった場合、観客は治療費などを支払ってもらうことはできるのでしょうか? あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士にお伺いしました。

 

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■主催者には観客の安全確保義務がある

「“事故が起きる可能性を予測できたのに、対策しなかった”という場合には、請求できます。コンサートの主催者は、観客との間で、コンサートを提供することを内容とする契約を結びます(=チケット購入)。

この契約には、契約条項として明示されていなくても、観客の安全を確保する義務が付随します。

“事故が起きる可能性を予測できた”場合において、“対策しようと思えばできたのに、対策しなかった(=過失がある)”というときは、この義務に違反したということで、損害賠償責任が発生します。

ただし、以下のふたつの問題があります。

(1)どのような場合に「事故が起きる可能性を予測できた」と言えるのか。
(2)対策はとれたのか(対策できるような事故だったのか)

例えば、“野外や熱のこもりやすい構造の建物内での開催”“気象庁から「高温注意情報」が発表されていた”“熱中症を発症しても非難できないほど観客が多かった”などの場合は、熱中症を発症する可能性を予測できます。

また、“救護活動の準備をしていない”“飲み物や避難場所を確保していない”“熱中症注意のアナウンスをしていない”などがあれば、とれるはずの対策をとっていないと言えるでしょう」(高野倉弁護士)

 

■治療費や休業補償など請求できる?

コンサートで熱中症や怪我などを負った場合、治療費を始め、タクシー代や休業補償、慰謝料などを請求できますか?

「可能です。ただし、“熱中症になったから、その出費=損害が発生した”といえるだけの因果関係がなければなりません。

熱中症になって、タクシーで病院まで行ったという場合には、タクシー代は認められると思われます。どうしても具合が悪く、タクシーで帰宅せざるを得なかったという場合も、認められやすいと思います。

休業損害は、それによって本当に損害が発生している必要があります。給与所得者は休んでもお給料が出るので難しいかもしれませんが、個人事業主であれば、比較的認められやすいと思われます。

また、入院するなど重症化した場合には、慰謝料も認められると思います。ただし、金額はさして高くありません。死亡した場合には、1,000万円単位での慰謝料もあり得ると思います」(高野倉弁護士)

主催者の過失によって被った損害には、費用を請求する権利があります。ただし、損害額を立証するためには、診断書や領収書などの資料が必要です。

また、休業損害を請求するのであれば確定申告書などから1日あたりの利益を計算して損害額を算出します。

 

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■覚えておきたい! 損害賠償請求の条件

コンサートだけでなく、その他のイベント会場、公共施設、飲食店などで過剰な混雑や運営者の不手際などにより被害を被った場合も、費用などを請求することは可能ですか?

「可能です。場所毎に、事故が発生する可能性を予測できたかどうかや対策の内容は異なりますが、予測すべきを予測せず、対策すべきを対策しなければ責任が認められるという基本的な考え方は変わりません。

例えば、サッカー場で落雷の可能性があるのに試合を続行させ、落雷事故が発生した場合について、運営者の責任を認めた裁判例があります。

また、明石市の花火大会で、歩道橋を渡っていた人たちに死傷者が出た事故でも賠償責任が認められています。

見物客の誘導計画について、他の計画を丸写ししたいい加減なもので済ませ、事故発生にも気が付かないといった杜撰な運営をした事例です。運営会社、明石市、警察がそれぞれ賠償責任を負いました」(高野倉弁護士)

どんなイベントでも、開催する者には安全に運営する義務があります。

そもそも責任があるのか無いのか(事故を予測できたのか、対策はとれたのか)という点を見極めるのは少し難しいところですが、万が一事故などあった場合には損害賠償を請求できる可能性があることを知っておきたいものです。

 

*取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)

*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)

【画像】イメージです

*graphicalicious / PIXTA(ピクスタ)

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