ネットショッピングの普及により、宅配便で荷物を送ってもらうケースが増えています。
配達時に自分や家族が自宅にいて受け取れる場合や、受け取れなくても再配達をしてもらえる場合には、何ら問題はありませんが、時折、宅配業者が隣人に荷物を預けたり、自宅前に荷物を置いていったりして、開封、紛失などに見舞われトラブルが発生するケースもあるようです。
では、隣人に荷物を預けたり、自宅前に荷物を置いていったりすることは、法律的に問題はないのでしょうか。今日はこの問題について解説していきます。
■無断で隣人に預けるケースは契約違反
宅配便は、荷送人あるいは荷受人が指定した配達先に荷物を送付することが契約内容になっているので、指定先と異なるところに荷物を送付した場合には、原則として契約違反になります。
ですが、配達先に記載されているのとは異なる住所に荷物を送付しても、実質的に配達先に配達されたと考えてよいケースであれば、契約違反として扱われることはありません。
例えば、荷受人が不在時の配達先をしているケースや、通常不在時には隣接している実家などに預けてもらうことになっているようなケースが考えられるでしょう。
このような例外的な事情に該当しない限り、隣人宅に配達されて、無断で開封され、中身が紛失したり損壊していた場合には、荷送人や荷受人は、その隣人だけでなく宅配業者に対しても損害賠償を請求することができます。
■自宅前に置いていくケースも契約違反
不在時に荷物を自宅前に置いていくケースも原則的には契約違反となるでしょう。
確かに宅配便は「受取必須」の契約にはなっていませんが、配達時間の指定のシステムがあることから考えると、荷受人本人やその家族が受け取ることが前提となっていると考えられるからです。
もちろん、宅配ボックスに入れていくケースなど、紛失や損壊のリスクがない状態で受取りなく配達を行う場合は、何の問題もありません。
また、自宅前に置いていくケースでも、近隣に他の家がない、人通りがほとんどない、雨風をしのげて損壊等の危険がないという場合など、例外的に許容されるケースもないとはいえません。
近年は、最初に述べた通り、ネットショッピングの普及により宅配業者の負担が増えています。配達のトラブルも宅配業者の負担が重くなればなるほど増えると考えられます。
トラブルを防ぐためには宅配業者だけでなく、荷受人や荷送人にも、配達時間を指定するなどの気遣いが必要ではないかと思われます。
*著者:弁護士 寺林智栄
【画像】イメージです
*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
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