配偶者が不倫をした場合、慰謝料を請求できるということをご存知の方は多いのではないでしょうか。
請求した額をすんなりと相手方が払ってくれれば問題はありませんが、お金がなかったり、渋ってたりなどスムーズにいかない場合もあるかと思います。
本記事では、上記のような相手方が慰謝料を払ってくれない場合にどうすればいいのかを解説していきたいと思います。
■まずは強制執行する必要がある
慰謝料について当事者同士で合意したに過ぎない場合には、まずは、調停や裁判を経て「債務名義」を取得したうえで、相手の財産(不動産、預貯金等)に対して強制執行する必要があります。
すでに調停や裁判を経て、調停調書や判決等の「債務名義」を取得している場合には、当該債務名義に基づき、相手の財産に対して強制執行することにより、慰謝料を回収することができます。
なお、慰謝料等についての合意について公正証書を作成し、「強制執行認諾文言」(慰謝料を支払わない場合には、直ちに強制執行に服することを承諾するもの)を入れておけば、判決と同様に「債務名義」となりますので、調停や裁判といった手続を経ずに、相手の財産に対して強制執行することができます。
以下では、各財産ごとに強制執行の方法を説明します。
■不動産から回収する方法
相手が不動産を所有している場合には、「不動産強制競売」の申立てを検討することになります。
もっとも、当該不動産に住宅ローン等の抵当権が設定されている場合、住宅ローンが不動産価格よりも高い場合(いわゆるオーバーローン状態)には、不動産の売却代金は、すべて住宅ローンの弁済に充てられてしまいますので、慰謝料の回収を図ることはできません。
そのため、競売を申し立てるにあたっては、当該不動産に抵当権等の担保権がついているのか、ついているとすれば住宅ローンはいくら残っているのかを確認することが重要です。
■預貯金から回収する方法
相手が預貯金口座を保有している場合には、当該預貯金に対する「債権執行」の申立てを検討することになります。
金融機関名と支店名さえ特定すれば、預金種目や口座番号等の情報が分からなくても、預貯金口座に対して債権執行をすることができます。
もし、相手が有する預貯金口座が分からない場合というには、相手の住所地や勤務地周辺の金融機関の支店に的を絞って、債権執行の申立てをかけるという方法もあります。
もっとも、離婚時においては、相手の預貯金の情報も明らかにになっている場合も多いでしょうから、相手がどの金融機関に預貯金口座を持っているのか全く分からないといった事態はあまり生じないでしょう。
■給与から回収する方法
相手が会社に勤めている場合、相手の会社に対する「給与債権の差押え」を検討することになります。
ただし、差押えをすることができるのは、給与の4分の1に相当する部分だけです。
給与債権の差押えをするためには、相手の勤務先の名称や所在地を把握しておく必要があります。
■まとめ
以上のとおり、相手が慰謝料を任意に支払わない場合、相手の財産から強制的に慰謝料を回収する方法はいくつかあります。
しかしながら、相手が、上記のような財産を何も持っていないという場合には、残念ながら、請求する側としては、泣き寝入りするほかはないということになります。
そうならないためには、慰謝料の支払いについて資力のある人に保証人になってもらうなどの措置を講じておく必要があります。
*この記事は2014年9月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
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