先日、孫が年金支給日を狙って祖父の家に勝手に上がり込み、パチンコ代をせびるのが常態化。孫ということで大目に見ていた祖父が「おまえは孫じゃない」と拒否したところ殺害されてしまう事件がありました。
年金額は年々減っていますが、それでも現在の高齢者は、若者が将来もらうよりもはるかに高額の年金を受け取っています。
生活が安定しない非正規雇用や無職の若年世代からすれば、近く、もしくは同居する年金生活者の財布はあてになる定期収入というわけです。
しかし、祖父・祖母が家族に対して年金を好意的に贈与したり貸したりしていない場合、高齢者が生活に困窮してしまいます。その場合、家族でも訴えて年金せびりを強制的にやめさせることはできるのでしょうか?
銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士にお訊きしました。
「まずは、弁護士に相談し、内容証明で止めるよう警告するのが大切かと思います。また、認知症だったりする場合には、成年後見人を付けることを検討されると良いかと思います」(小野弁護士)
成年後見人というのは、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人に変わって不動産や預金管理、その他の契約を結ぶ代理人を、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官の申し立てにより家庭裁判所で決定するものです。
この後見人がきっちりお金を管理することで、せびりを防ごうというわけです。
■恫喝すれば恐喝、勝手に持っていけば窃盗に!
成年後見人をつけていない状況で暴力的に恫喝したり、留守や、認知症をいいことに身内が勝手にお金を保っていってしまった場合、どんな刑事罰になるのでしょう?
「恫喝の場合は恐喝罪、認知症を良いことに勝手に持っていく場合は窃盗罪になります」(小野弁護士)
しかし、相手が家族となると、ことはそう簡単ではないようです。
「基本的に、配偶者、直系血族又は同居の親族との間でこれらの罪を犯した場合は、刑が免除されることになっています(刑法244条1項)」(小野弁護士)
なんということでしょう! 家族の間でも金銭せびりや巻き上げが常態化、悪質化していれば罪に問われてもおかしくないように思えますが、家族間の問題として罰することができないなんて。
小野弁護士によれば、実際、このようなケースで親族間で裁判になるケースは少ないそうです。
■老人にたかる家族には自衛策をとるほかない
「この問題は今に始まったことではありません。刑法上も特に処罰されるわけでもないので、自衛するしかありません。
おじいちゃん、おばあちゃんの財産は、その親族がしっかりと管理するか、認知症だったりした場合には、法的に成年後見人を付けてもらうなどした方がよろしいかと思います」(小野弁護士)
加えて家族会議でしっかり話し合ってことを明らかにし、このようなことを二度としないよう誓わせる、見張らせることも必要でしょう。
とはいえ、ろくに働きもせず、いい年して祖父や父に金をせびりにくるような怠惰な性格は、そう簡単に治るとも思えません。
そのあげくの殺人事件だったわけです。こうなるとさすがに逮捕されます。また、暴力で傷を負ったりすれば話は別です。
暴力を用いて金を持ち逃げすれば、立派な強盗罪です! 躊躇せず、警察を呼びましょう。
*取材協力弁護士:小野智彦(銀座ウィザード法律事務所代表。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする)
*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)
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*和尚 / PIXTA(ピクスタ)
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