日本にインターネットが普及して20年あまり。生まれたときからネット環境が整っていたという若者も増えてきました。
ネット黎明期と比較すると「リテラシー」はかなり向上しているように思えますが、一方で「おでんツンツン男」やコンビニのアイスボックスに横たわった男など、一般常識を大幅に逸脱した行動をTwitterやSNSにアップロードするユーザーが少なからず存在しています。
流石にそこまで大それたことをする人は少ないと思われますが、ネット上で会社への不満や文句を綴っている様子を目にすることは多々あります。
たいてい、「それはひどいよね」「上司、最低だよね」という同情レスが入るため、一種のストレス発散や慰めの効果があるようです。本人としてはそれでスッキリするのでしょうが、会社側としてはそのような光景を放置するわけにもいきません。あまりにもひどい場合は解雇させたいところ。
しかし、たかがネット上の悪口くらいで解雇というのは、オーバーすぎる気もします。一体そのようなことは可能なのか。インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士にご意見を伺いました。
Q.ネット上で会社の不満や文句をいう社員……解雇することはできる?
A.程度によりますが、不満や悪口程度では難しいと思われます。
「まず、解雇には普通解雇と懲戒解雇があります。普通解雇は、30日前の解雇予告か、30日分の解雇予告金を支払うことで解雇することができるということになっていますが、解雇するためには、たとえば本人の著しい能力不足とか、勤務態度が不良であるといった、それ相応の理由が必要とされます。
SNSで会社の悪口を言っているということについても、普通解雇をすることは可能といえますが、それが有効になるかどうかは程度問題といえます。程度が著しいといえるものであれば有効になるでしょうし、他方で、大したことがないということであれば、解雇権の濫用として無効になる可能性もあります。
他方、懲戒解雇をするためには、就業規則に懲戒事由が定められていることが必要になります。懲戒事由として、たとえば、会社の評判を著しく毀損したというのが定められていることがあると思いますが、そのような懲戒事由があれば、解雇できる余地は一応あります。
しかし、懲戒できるとしても、懲戒の内容としては解雇以外にも譴責とか減給、出勤停止といった処分もあるところであり、それらではなく解雇が必要だとするのは、相当ハードルが高いと一般的にいうことができます。
結局、解雇が有効かどうかは、やっていた行動の程度問題次第ということができることになりますが、会社の文句や悪口を言っているという程度であれば、それが誰が見てもあまりに酷いといえるようなものでなければ解雇することは難しいのではないかと思えます」(清水弁護士)
一般的な不満や悪口程度では普通解雇や懲戒解雇は難しいようですが、会社の名誉を著しく毀損していると判断される場合は、懲戒の対象となることもありうるようです。
ネットは全世界に発信されていますから、見ていないふりをして実はしっかり監視されていることもあります。軽はずみな発言には、注意しましょう。
*取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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