毎年この時期になると、大手企業ではベースアップや定期昇給の話が労使間の交渉で進められていますが、同じように給与が毎年定期的に上がっているという方はそれほど多くないのではないでしょうか。
また、10年後、20年後ともなると、そもそもいま勤めている会社が存続しているのかどうかすら、予想することは困難でしょう。
そんな先行き不透明な現代において、「退職金」というのはちゃんともらえるのかどうか不安視されている方も多いでしょう。
退職金制度があるという会社でも、ある時を境に突然業績悪化を理由に退職金を一切支払わないなどと会社から通知されたら、従業員としてはこれを受け入れるしかないのでしょうか……?
Q.退職金が支払われないなんて違法じゃないの……?
A.これまで退職金が支払われていた慣行のある会社であれば、会社側の一方的な都合でいきなり退職金を全額支払わないとすることはできません。
まず、原則として退職金の支給は「退職金規程」などで支給条件がルール化されている会社がほとんどです。ルール化されているということは、会社の勝手な都合で一方的にこれを反故にすることはできないということです。
もちろん、会社によってはリスクヘッジとしてルールブックである「退職金規程」に「会社の財政状況によっては退職金を支給しないことがある」などという条項を定めているケースもあるとは思います。
しかし、それでも退職金制度というのはそれが定められていれば労使間で合意された「権利・労働条件」であると言えるため、単に「業績悪化」という理由だけで一方的に退職金を不支給とすることは許されません。
会社としては仮に退職金制度を見直す場合であっても、従業員が受ける不利益の大きさや退職金を減額しなければいけない合理的な理由などを考慮し、しっかりと労使間で交渉する必要があるのです。
一方的な不支給というのは違法となり、仮に訴えられれば支給義務が生じる可能性もあります(ただ、そもそも退職金制度や退職金の支払い慣行が全くない会社に対しては、退職金の支払いを求めることはできません)。
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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