「責任が重くなるから」…管理職への昇進命令を断ることはできる?

早いものでもう3月になり、会社によってはそろそろ来年度の4月に向けた人事異動の事例が出始めているところもあるのではないでしょうか。

通常、昇進・昇格などは会社員にとって喜ぶべきものですが、一方で管理職になると現職よりも責任が増大したり、手当が役職手当のみになって残業代の対象から外れたりするため昇進したくないと思う人もいるかもしれません。

このように、会社から昇進命令があった場合、法的にこれを断ることは可能なのでしょうか?

Q.昇進命令を断ることは可能なの?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

 

A.昇進命令は会社の人事権の範囲なので、会社からの説得に応じずこれを頑として拒否すれば解雇される可能性もあります。

まず、昇進命令ですが、確かに責任の度合いが増したり残業手当が付かなくなったりと必ずしも会社員にメリットだらけの事例ではありません。

しかし、過去の裁判例は会社側に人事権の裁量を幅広く認めており、(その代わりとしてか「解雇」については非常に厳しく規制されています)転勤や出向などと同様、昇進についても特別な事情のない限りは従業員の同意を得ず、会社側の一方的な「命令」として従業員を昇進させることができるものと考えられます。

よって、正当な理由もなしにこれに従わず、会社からの再三にわたる説得にも応じずに昇進を頑として拒否するのであれば、これは多くの会社で通常定められている就業規則の懲戒解雇事例(業務命令への拒否)に該当するため、最終的には懲戒解雇される可能性があります。

どうしても昇進したくない場合は、その理由を明確に説明し、会社とのコンセンサスを得ることが重要になるでしょう。

 

*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。

【画像】イメージです

*happyphoto / PIXTA(ピクスタ)

【関連記事】

転勤なしの条件で入社したのに転勤辞令…断ることはできない?

店長や課長は残業代が出ない!? 法的に管理職と扱われるのはどこから?

退職を伝えたら給料を下げられた…これって違法じゃないの?

「家賃手当廃止」「給料10%カット」…労働条件変更は社員に了承を得なくても可能?

辞めたくないのに会社側が退職を強要…従業員はどう対処すればいい?

コメント

コメント