清水富美加さんも同じ?劣悪な環境から逃げる行為はNG?

女優の清水富美加さんが事務所を突然辞め、宗教団体「幸福の科学」に出家したことは、人々に大きな衝撃を与えました。

清水さん側によると、一連の行動の背景には事務所との奴隷契約のようにも感じられた過酷な労働環境があったとのことです。

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

 

■突然会社に行かないという行為は許されるのか?

事務所側がこの主張に反論しているため事実関係は不明ですが、仮に過酷な労働をしいられていたのなら「逃げる」ことは致し方ないのかもしれません。しかし、一部の芸能人からは「逃げるな」、「責任を果たせ」という声もあるようで、意見が分かれています。

一般社会でも労働時間が長いにも関わらず低賃金で、残業もつかないという過酷な環境に身をおいている人が少なくありません。長時間の残業を苦に自殺に至ってしまった事件も発生しているだけに、自分を守る意味という意味で「突然辞める」ということも選択肢として認められてもいいように思えます。

しかし、経営者はそのような行為は「無責任」と感じるようです。両者の意識の違いは埋まりそうにありません。それでは公平性の高い法律的に見て、「突然会社に行かない」という行為はどうなのでしょうか?

銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士に見解を伺いました。

 

■就業規則に定めがない場合民法が採用される

「基本的には、就業規則の定めによりますが、就業規則に定めがなかった場合には、民法の定めによることになります。まず、期間の定めのない労働契約の場合(終身雇用のような場合)です。

基本的に、辞職は自由ですし、その理由も問いませんが、2週間前の予告が必要です(民法627条)。つまり、社長宛に辞職届を出してから、2週間経てば辞められます。その間に、仕事の引き継ぎなど会社に迷惑がかからないような準備をしてくださいという趣旨です。

なお、2週間の期間を置かずに退職して会社に損害を与えた場合には、損害賠償が認められることもあります。2週間の有給休暇が残っているのであれば、それを消化することによって、直ちに出社しないということもできるかと思います」(小野弁護士)

 

■契約社員等の場合は?

「期間の定めのある労働契約の場合(契約社員など)には、やむを得ない事由がある場合にのみ、ただちに解約できます。ただし、やむを得ない事由を故意・過失により生じさせた当事者は、他方当事者に対し、解約により生じた損害につき賠償責任を負う可能性があります(民法628条)。

劣悪な環境の程度次第では、やむを得ない事由があると認定されるかと思いますし、劣悪な環境を作り出したのが会社だとすれば、会社に対して損害賠償請求もできるかと思います」(小野弁護士)

 

■弁護士に相談を

就業規則に特段の規定がない場合民法が適用され、正社員の場合は原則2週間前の予告が必要とのこと。一方契約社員等については、やむを得ない理由があればただちに解約しても問題ないようです。ルールに則った退職ではない場合や辞めることで損害が生じた場合、賠償責任が発生するようです。

ブラック企業の場合、一刻も早く抜け出したいと思うのが人情。そのような企業は辞めることを認めないこともあるうえ、法律を無視して損害賠償を求めてくることも考えられます。

そのようなときには1人で悩まず、弁護士に相談することをおすすめします。

 

*取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

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*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)

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