東京都の渋谷区や世田谷区をはじめ、国内のいくつかの市では、同性カップルに対して、結婚に相当する関係を認める「同性パートナーシップ制度」が制定されています。
国内でも恋愛や結婚に対する価値観が多様化してきており、若い世代を中心に性別にこだわらない恋愛・結婚意識を持つ人が増えてきているようです。
ならば、例えば、夫が実は同性愛者や両性愛者だった、という話もあり得ない話ではないかと思います。
夫が女性と不倫関係に陥っていたら、離婚できるという見当はつくかと思いますが、一方で、夫が男性と不倫関係に陥っていた場合はどうなのでしょうか? 今回は同性との不倫について触れてみたいと思います。
■同性の相手との不倫も「不貞行為」に該当するのか?
まず、同性の相手と性的関係をもつことが「不貞行為」に該当すれば、離婚事由に該当します(民法770条1項1号)。
「不貞行為」とは、配偶者のある者が自由な意思にもとづいて、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶこととされています。
そのため、配偶者以外の同性と性的関係を結んだとしても、不貞行為には当たらないということになります。
したがって、「不貞行為」を理由には離婚することができないということになります。
■「不貞行為」以外の離婚事由には該当するのか?
もっとも、夫が同性の相手と性的関係をもったことが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すれば、離婚をすることができます。
この点に関して、夫が同性愛に走り、妻との間で性交渉を全く持とうとしなかったという事案について、性生活は婚姻生活における重大な要因の一つであって、妻がすでに、すでに数年間にわたり夫との間の正常な性生活から遠ざけられていることや、夫が同性愛者だと知って妻が受けた衝撃の大きさを考えると、妻、夫相互の努力によって正常な婚姻関係を取り戻すことはまず不可能と認められるという理由により、「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在するということで、妻からの離婚請求を認めた裁判例があります(名古屋地裁昭和47年2月29日判決)。
この裁判例の判断に従えば、単に夫が同性の相手と性的関係をもったという理由だけでは「婚姻を継続し難い重大な事由」を認めらないということになります。
夫が同性の相手と性的関係をもったことに加えて、数年間にわたって妻との間で性関係を持たず、もはや夫婦間の努力によっては正常な婚姻関係を取り戻すことが不可能である場合に初めて、「重大な事由」が認められ、離婚請求が認められるということになります。
以上のことは、滅多に無いケースですが、いつ自分が巻き込まれるか分かりませんし、自分が同性愛に目覚めるかもしれません。念頭に置いておくと役に立つ日がくるかもしれないですね。
*この記事は2014年11月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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