最近、梅毒が急増しているといわれています。原因は諸説ありますが、風俗産業の低価格化や性病への意識の低さなどが指摘されているようです。
梅毒はおもに性行為によって感染する病気で、有名な武将も梅毒で命を落としたといわれています。現在はペニシリンの開発で死することはほとんどないようですが、恐ろしいものであることには変わりありません。
仮に感染経路が「風俗産業」と確実に特定できるのならば、「梅毒を移された」と提訴したくなります。現実的にそのような法的措置に出る人は少ないとは思いますが、1つの選択肢として可能性を探ってみましょう。
和田金法律事務所の渡邊寛弁護士に可能であるかどうかを伺いました。
Q.梅毒を風俗店で移されたと特定できる場合、店を訴えることができる?
A.現実的には難しい
「理屈としては、店舗が損害賠償責任を負うこともあり得ます。
もっとも店舗に対して不法行為に基づく損害賠償請求が認められるには、請求する側が、①店舗やサービスを行った従業員の故意・過失、②損害の発生、③行為と損害との因果関係を立証しなければなりません。
②の損害の発生の立証は容易でしょうが、①故意・過失や③因果関係の立証は難しいことが多いでしょう。客の主観的には、特定の風俗店での感染が確実であっても、因果関係が認められるには、風俗店従業員も梅毒に感染していたことや他の感染経路の合理的可能性がないことを立証しなければならず、相当難しいものと思われます。
さらに、①故意・過失があったというには、従業員が自身の梅毒罹患を知っていたとか、店舗が必要な性病検査を怠っていたとかを主張立証することになりますが、これも簡単ではありません」(渡邊弁護士)
やはり現実的には「ムリ」という結論のようです。自己防衛するしかありませんね。
*取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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