アベノミクス効果で経常黒字が高水準化しているといわれる昨今。破産・倒産企業も減少傾向にあります。しかし、先日プロレスリング・ノアの前運営会社が破産したように、厳しさを増す業界ではそのような企業も残念ながら出てしまっています。
「破産」を経験された人もいることとは思いますが、実際に企業はどのような形で「その時」を迎えるのか。また、そのなかで弁護士はどのような仕事をしているのか? いまいちよくわかりませんよね。
そこで多くの事業再生・倒産案件を経験されているセンチュリー法律事務所の小澤亜季子弁護士に破産の「流れ」や弁護士の職務についてお話をお伺いしました。
■破産決意に至るまで
「資金繰りに悩んだ社長が、弁護士事務所に相談にやってきます。弁護士は、社長から会社の資金繰りその他の状況を聞き、取り得る手段を検討します。
取りうる手段としては、清算型(破産)と再建型(民事再生、私的整理等)がありますが、1つの目安として、弁済期が到来している債務の支払いを止めた上で3~4カ月間資金繰りがもつようなら、再建型の方法(民事再生、私的整理等)が選択できる可能性があります。
事業の再建が難しいようであれば、残念ながら、社長に破産を決断してもらいます。ただ、今回の元・プロレス興行団体『ノア』の運営会社のように、破産の前に、事業を別会社に譲渡して、その後破産をするという方法もありますので、どのような方法を取るかについては、弁護士とよく相談することが必要です」(小澤弁護士)
■破産を決意したら準備に入る
「破産をすることを決断したら、裁判所に破産を申し立てる日をいつにするかを検討します。資金繰りが破たんする直前の時期に申し立てることが多いです。
破産を申し立てるには、様々な書類作成その他の準備が必要です。社長だけではとても準備ができないので、経理担当者や人事担当者など、ごく限られた範囲の人にだけ、破産することを打ち明け、破産申立準備を手伝ってもらいます。
万が一、破産申し立て準備中である旨が外部に漏れると取り付け騒ぎになってしまいますので、会社の内外問わず、破産申立の件は絶対秘密で準備を進めます。
申立の準備チームが決まったら、会社側と弁護士とで協力しながら、申し立てに必要な書類を作成したり、破産申し立て後起こりうる混乱(例えば、取引先が商品を引き揚げに来る)を想定して財産の保全の準備をしたりします。また、『ノア(NOAH)』の運営会社のように、事前に事業を別会社に譲渡する場合には、事業の譲受候補を探したり、候補者との交渉も行います」(小澤弁護士)
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