「もしも、裁判員に選ばれたら」こんなことを考えたこと、ありますか?
平成21年5月21日にスタートした裁判員裁判。裁判所のデータによると、平成28年11月までに約1万件の裁判が開かれており、選ばれた裁判員、補充裁判員の数は約8万人という数になります。
もしかしたら、この記事をご覧の方で実際に裁判員になられた人がいるかもしれません。今回は裁判員裁判について、私の経験も交えて綴ってみたいと思います。
■裁判員に選ばれるには? 辞退ってできるの?
裁判員になるためには、まず「裁判員候補者名簿」というものに登録される必要があります。この段階で、ここに選ばれる確率は約450分の1くらいです。かなりの狭き門です。
そこから、個別の事件ごとに約90人の候補者に通知が届きます。通知が届いた場合、書類に記載されている辞退の条件を満たしていれば、所定の手続きを取って認められれば呼び出された日に出頭しなくても良いということになります。
実際に、裁判員選任手続に出席される方は約30名です。出席した結果、選任手続中に裁判所から辞退が認められるケースもあります。
僕がこれまでに経験したケースでは、年齢が70歳以上の方、仕事の都合上どうしても自分がいなければ周りに大きな迷惑をかけてしまう方、ご両親の介護などで日中どうしても家を空けられない方などについては、比較的柔軟に辞退が認められているように思います。
もちろん、程度にもよりますので裁判官からは個別に質問されるなどして、微妙なケースは辞退が許されないケースもあるかと思います。
このように、辞退が認められれば、のちに行われる抽選からは外されますので、裁判員に選ばれる可能性はありません。なお、会社が裁判員休暇を認めてくれているので参加には全く支障が無いという方も結構おられます。
■裁判に臨む裁判員の姿勢
選任手続には、実は弁護人や検察官も立ち会います。ただ実際に弁護人や検察官はほとんどやることはなくて、「顔見せ」くらいの意味しかありません。
ほぼ唯一、意味があるといえば、「理由なし不選任」という権利を使える点です。これは、検察官や弁護人が特に理由を述べずとも、選任手続に来ている裁判員候補者を抽選から除外できる制度です。
僕の感覚的に、裁判員裁判が始まった当初はこの制度を用いて何名か(原則4名以下)の候補者を弾いていたこともありますが、最近はほとんど使っていません。
最初の時期は、例えばわいせつ系の事件の際に、「被害者と同じ年くらいの女性は候補者から外した方がいいのではないか」とか、「見た感じ厳しそうな女性より、おっとりした年配の男性を残した方がいいのではないか」などと考えていたのですが、実際やってみるとあまり関係ないのではないかと思うようになりました。
といいますのも、裁判員に選ばれた方というのは、本当に真剣に事件について考えてくださっていて、私情に左右されない判断をしてくださっているなぁと実感するようになったからです。
その辺は、裁判所の指導や注意喚起の賜物なのかもしれませんが、やはり職業上何件もの裁判を裁いてきた裁判官よりも、この事件1件に集中して頑張ってくれている裁判員の方がある意味とても集中してというか真摯に事件と向き合ってくれているのではないかと感じるほどです。
そういうところは、裁判員からの証人や被告人に対する質問などからひしひしと伝わってきます。こんなことを言うと、現役裁判官に怒られますが、もしかしたら裁判官よりずっと公平に事件を見てくれているのではないかと思うほどです。
これは、僕の個人的な意見ですので、もしかしたら僕がこれまで裁判員に恵まれてきただけかもしれません。でも、周囲の弁護士からも裁判員に対する小言を聞いたことが無いので、個人的には的を射た指摘ではないかと思います。
なお、裁判員を経験した方を対象にしたアンケートでは、選ばれたときは過半数の方が「選ばれたくなかった」などとネガティブな意見を述べておられるようですが、終わった後には「良い経験になった」という方が9割を超えているという裁判所が発表しているデータもあります。
もし、みなさんも裁判員に選ばれたら、是非一生懸命頑張ってみてください。きっと大変だとは思いますが、よろしくお願いします。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)
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