民事?刑事?もしもの時のために知っておきたい!法廷ライターが教える裁判所の基本

悪いことをすると裁判で裁かれる。これは子供でも知っていることですが、その裁判にはいくつかの種類があることはご存知でしょうか? 裁判傍聴に魅了され裁判所に通っていたことがある筆者ですが、初めて裁判所を訪れその日の公判予定表を見た時は、「民事? 刑事?」と頭にはてなマークが浮かんだものでした。

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■裁判は大きく分けて「民事訴訟」「刑事訴訟」の2種類

裁判とは、犯罪やトラブルに対し法律を元に判断し、必要な措置を決める手続きです。対象の内容によって、大きく2つに分けられています。

民事訴訟:個人や法人などの間の紛争を扱い、解決を目指す。

刑事訴訟:いわゆる「犯罪」を扱い、犯罪が認められた場合は刑罰を決める。

簡単に言ってしまえば、個人(法人)vs個人(法人)が民事訴訟、国vs個人が刑事訴訟となります。裁判というと刑事ドラマの裁判シーンのイメージがあるのか、どんな裁判も検察官と弁護士が争うものと思われている方が時々いらっしゃいます。いずれの場合も当事者が自身の主張を裏付ける証拠を出し合い裁判官に判断を委ねますが、民事訴訟と刑事訴訟は別物なのです。

 

■人同士のトラブルを解決するのが「民事訴訟」

訴えを起こす原告となるのも、訴えられる被告となるのも、個人や法人などです。双方の主張を元に裁判官が判断を下しますが、お互いが納得できる条件で和解し裁判を終了することもあります。民事訴訟の目的は判決を出すことではなく、双方が納得しトラブルを解決することだからです。代理人として弁護士を立てることが多いものの、弁護士を付けない「本人訴訟」も可能です。 民事訴訟には、以下のような分類があります。

通常訴訟:一般的な民事訴訟法の手続きによる民事訴訟。

手形小切手訴訟:手形・小切手金の支払請求のための訴訟。証拠を書証と当事者尋問に限り、迅速に判決に至る。

少額訴訟:60万円以下の金銭支払を求める簡易迅速な訴訟。

人事訴訟:離婚や認知など家族間の関係についての訴訟。

行政訴訟:行政機関を相手に行う訴訟。

なお、イメージがしづらい「手形小切手訴訟」は、企業同士で手形や小切手での取引において正当な支払いがなされなかった時に起こすことができます。倒産などによって債務回収が不可能になる前に迅速に判決を出すための訴訟です。

 

■国家が犯罪を裁くのが「刑事訴訟」

刑事訴訟は犯罪に対する裁判で、訴えるのは検察官、訴えられるのは個人となります。被告人により犯罪が行われたのか判断し、犯罪が立証されればそれに見合う懲役や罰金などの刑罰が言い渡されます。

また、法定刑が「死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役、もしくは禁錮にあたる」事件の場合は、必ず弁護士を付けることが刑事訴訟法で定められています。

2009年より、一般市民から選ばれた裁判員が刑事訴訟に参加する「裁判員制度」が始まりました。対象は殺人や強盗致死傷、傷害致死、危険運転致死などの一部の重大な刑事事件となっています。裁判官3名に加え一般の裁判員6名の合計9名で判断に当たることで、国民感情を汲んだ慎重な判決が期待されています。

 

■いざというときのために裁判の基本を知ろう

このように、民事訴訟と刑事訴訟は扱う内容も進められ方も違っています。どちらも同じ裁判所の中で、同じように粛々と進められますが、法廷に漂うムードは異なります。民事裁判は原告被告ともに当事者が出廷せず弁護人と裁判官のみで淡々と進められるものが多く、刑事裁判ではドラマの裁判シーンのような丁々発止が起こることもあります。

トラブルや犯罪に巻き込まれることがなければ裁判や法廷とは無縁でいられるかもしれませんが、そんなに呑気でいられる時代でもありません。いざというときに慌てることのないように、裁判の基本的な仕組みや雰囲気を知っておくことは、きっと役に立つのではないでしょうか。

 

*著者:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)

*JanPietruszka / PIXTA(ピクスタ)

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