節分の日にある方角を向いて黙って食べると縁起が良いとされている“恵方巻”。その方角は毎年変わり、今年は北北西の方角を向いて食べると良いのだそうです。
さて、恵方巻のシーズンを間近に控えた今日ですが、「ノルマが課されていて悩んでいる」との書き込みがコンビニ等で働くアルバイトの方から全国相談窓口に寄せられているそうです。
そこで今回は、従業員にノルマを課したり、お店側が従業員にお店の商品やサービスを購入させることに問題が無いのかといった点について法的に解説したいと思います。
■ノルマ設定自体は問題ない
近年、ブラック企業だけではなく、ブラックバイトの問題が盛んにいわれるようになりましたが、従業員に厳しい営業ノルマを課し、達成できないと自腹での買取を強制することは、昔から問題となることが多くありました。
営業の業務に携わる従業員に、一定の売上ノルマを課すことや目標を設定し、叱咤激励することは問題ありません。
また、買取も、それ自体は、従業員がお店の商品・サービスを購入するという労働契約とは別個独立の売買契約ですから、仕方なくとも買取の意思があれば、基本的には有効です。
しかし、売買契約ですから、従業員は、たとえ業務上の営業ノルマ未達成があっても、買取の義務はなく、自由意思で拒否可能です。したがって、買取の意思がないのであれば、明確に買取拒否の意思を示す必要があります。
社員割引適用で一般より有利に購入できるケースもありますので、明確な買取拒否の意思表示がないと、有効な売買契約と評価され、違法性が立証できないことにもなります。
他方、従業員が買取拒否の意思表示をしたのに、強制的に給与から代金相当額を差し引き、給与を減額することは、賃金全額払いの原則を定めた労働基準法24条1項違反となります。使用者は、30万円以下の罰金を科される場合があります。
■買取の強制性が微妙な場合
買取拒否の意思表示の有無が微妙で、かつ、形式上は給与減額ではないケース、例えばいったん全額給与を支払った後すぐに商品代金分を返還してもらうようなケースも、個別の事情によっては、やはり労基法違反と評価されます。
社員割引が適用されていても、明らかに一般的に不必要な過量または多額の購入がある場合は、実質的には給与からの減額であり、違法であると判断されることもあります。
また、ノルマ未達成による給与減額はなく、逆にノルマ達成者には昇進や昇給があるケースで、営業成績を上げるために従業員の判断で、自主的に保険に加入したり、商品を買うこともありますが、その場合は、違法とみるのは難しいでしょう。
■紛争予防のためには明確な意思表示を
買取を後から無効として争うのは大変です。
ノルマ未達成を理由に望まない買取を持ちかけられた場合は、まず買取拒否の意思表示をメールなど記録に残る形で残してみましょう。なお、買取強制が違法となるのは、正社員もアルバイトも変わりません。
義務のないことを要求されているのではないかとの疑問があったら、職場外の第三者や弁護士に相談してください。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)
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