囲碁のプロを目指した弁護士に学ぶ「勝負強さ」の秘訣とは

Photo by 伊藤 あきら

京都大学卒業後、4大法律事務所でM&Aや巨額な税務訴訟案件を始めとする有名企業や大企業の案件に携わっていた坂尾弁護士。中学時代はプロの囲碁棋士を目指していたということもあり、勝負にはかなりこだわりがあるとのこと。そこで今回は弁護士としての“勝負強さ”についてお話を伺いました。

坂尾 陽(さかお あきら) 
(アイシア法律事務所代表弁護士。京都大学法学部・京都大学法科大学院卒業後、四大法律事務所の1つ「森・濱田松本法律事務所」において、M&A、相続・事業承継、税務訴訟案件を主に担当。東京・銀座において独立してアイシア法律事務所を設立)

 

■勝ち負けがはっきりする弁護士という仕事

__弁護士として仕事をする中で、“勝負強さ”は求められていると感じますか?

弁護士の仕事は「勝ち」「負け」がはっきりと決まる世界です。当然、“勝負強さ”は求められていると思いますね。私自身も「勝ち」「負け」にこだわって仕事をしています。弁護士は成果として勝敗は必ず付いてきますから、“勝負強さ”というのは必要ですね。

__坂尾弁護士は過去にプロの囲碁棋士を目指されていたということですが、“勝負強さ”ということを考えると、その時の経験は今でも活きていると思いますか。

そう思いますね。私は、中学時代は「ヒカルの碁」という漫画を読んでプロ棋士を目指して囲碁をしていました。中学1年生で囲碁を始めて中学3年生の時には五段を取得したものの、プロ棋士になるための壁の高さに挫折して、プロの棋士になる夢は諦めましたが、勝負の世界に身を置いていたことは今の私にとって大きな経験となっていると考えています。

中学生ながら「勝ち」と「負け」で天と地の差ほど違うという経験を味わうことができましたからね。もちろん、弁護士の仕事は「勝ち」「負け」だけの世界ではありません。それでも相手が必ず存在している仕事である以上、勝負にはこだわって仕事をしています。

__弁護士の仕事と囲碁は通じるところがありますか?

やっている内容は全く違いますが、通じるところはあると思います。囲碁も弁護士の仕事も人間同士が戦いますので、駆け引きなど、似ているところはあります。

例えば、囲碁では勝ちすぎないことも重要です。最善の一手を常に打ち続けることが囲碁では求められるのですが、勝ちを欲張りすぎるとバランスを崩してしまい、余裕で勝てたはずの勝負であっても、負けてしまうことがあります。

これは弁護士の仕事でも同様で、例えば交渉の際、自分が相手よりも圧倒的に有利な立場にいた時に相手を追い詰め過ぎてしまうと、かえって話がまとまらなくなるといったケースなどがあります。

囲碁も弁護士の仕事も勝ちを欲張り過ぎることなく、譲れるところはしっかりと見せて、状況を見ながら冷静に最善の一手を常に考えることが重要ですね。

 

■自分の土俵で戦うことが“勝負強さ”の秘訣

__“勝負強さ”を発揮するうえで、何か重視しているポイントはありますか

戦う場所を考える。これはとても大事にしています。

例えば裁判。裁判は1つの事案に対して問題や論点があり、それを解決していく場であるというのは皆さんもご存知かと思います。しかし、実は解決すべき問題や論点はどれなのかを、こちらで選ぶことができることが多いのです。

しっかりと準備をして、あらかじめ裁判官に今回の事案のどこがポイントとなり、どこが論点になるのかを伝えることで、戦う場を自分で設定し、話を有利に進めることができます。

「自分の土俵で戦う」これが勝負強さを発揮する上で、私はとても重要なポイントだと思いますね。

__自分の土俵で戦うために工夫していることはありますか。

工夫ではありませんが、準備をしっかりとするようにしています。勝ちすぎると良くないということに通じる点でもありますが、単純に自分に有利な場を設定するだけでは、当然相手は警戒するので、そこに相手は乗ってきません。

一見すると相手にも有利に見えるような場を設定し、その中に隠し玉や自分が勝てる条件をしっかりと揃え、相手を自分の土俵に上げる必要があるのです。そして、これらは全て準備がなければできないことです。もちろん時間はかかりますし、手間もかかります。しかし、どれだけ準備ができたのかで勝負が決まることも多いので、手を抜くことはありません。

綿密に準備をして勝負に臨むこと、これが自分の“勝負強さ”につながっていると私は考えています。

 

 

*取材協力弁護士:坂尾 陽(アイシア法律事務所代表弁護士。京都大学法学部・京都大学法科大学院卒業後、四大法律事務所の1つ「森・濱田松本法律事務所」において、M&A、相続・事業承継、税務訴訟案件を主に担当。独立しアイシア法律事務所を設立。現在はテレビ東京WBSワールドビジネスサテライトやFMうらやす「ときめきウィンド」の準レギュラーなど、メディアへの出演も積極的に行っている)

*取材・文:伊藤 あきら(AFP、クラシックカメラアンドアンティークカンパニー株式会社代表取締役。同志社大学卒業後、日本生命相互会社、HIPHOPダンサー、税理士法人を経て、現職。会社経営の傍ら、フリーライターとしても活動している。オフィシャルサイト「いとうノート」)

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*伊藤 あきら

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