「晴れて昇進! 年収がアップするぞ!」と思いきや「管理職になると残業代は出ないよ」と言われ、結局のところ定額の役職手当を貰うことで平社員の頃より給与が下がってしまった……。
こんな話を聞いたり実際に経験したりした人は多いのではないでしょうか。今回の記事では、「管理職=残業代は出ない」という認識は法的に正しいのかどうかについて解説します。
Q.管理職になると残業代は出ないもの?
A.現実は残業代が出るケースの方が多いでしょう。ただ社内の管理職になったからと言って、労基法上の「管理監督者」に該当するとは限りません。
法律上は、確かに「管理監督者」に該当する従業員には残業代を支払う必要はないという条文があります(ただし、深夜の残業代は支払う必要があります)。
ただし、某ハンバーガーチェーンの「名ばかり管理職問題」を覚えているかもしれませんが、この「管理監督者」は単なる社内の管理職とイコールではないのですね。行政解釈では、「経営者と一体的な立場にある者」が管理監督者に該当するものとされています。
具体的には個別の事案ごとに判断されるため、一律の基準は存在しないのですが、例えば自分の勤務時間は自分で管理することが可能であったり、自分の部門の採用権限を持っていたりするなど相当の「権限」があり、なおかつ経営者クラスの「報酬」をもらっているかどうかなどが判断基準になります(この辺りの基準が具体的に定まっていないのは法的な不備があると筆者は考えています)。
そのため、一般企業の店長や係長、課長クラスでは通常この「管理監督者」に該当しない場合が多いはずです。よって、会社側がこれらのポジションの人を勝手に「管理監督者」と解釈して残業代を支払わないのは違法と判断される可能性が非常に高いと言えます。
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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