12月19日、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕されていた歌手のASKAさんが「嫌疑不十分」で不起訴となり、釈放されました。理由としては、本人の尿として任意提出された液体が、本人の尿であると立証できなかったためと報道されています。
皆さんの中には、この「嫌疑不十分」という言葉にあまり馴染みがない方も多いかと思いますので、今回はこの法的解釈について、解説していきたいと思います。
■不起訴処分の理由には「嫌疑不十分」の他にも「嫌疑なし」「起訴猶予」が存在
この「嫌疑不十分」というのは、犯罪の疑いはあるものの、公判維持ができるほどの証拠が不十分という理由で、不起訴処分となる場合に使われます。報道によれば、尿が本人のものではないというASKAさんの主張を警察が覆せなかったとのことで、この点の証拠が不十分ということでの不起訴となった模様です。
ちなみに不起訴処分には、「嫌疑不十分」の他、「嫌疑なし」というものと、「起訴猶予」というものがあります。
「嫌疑なし」というのは、例えばアリバイが証明されたなど、犯罪の疑いが晴れた場合をいいます。
また、「起訴猶予」とは、公判維持が可能であったとしても、例えば、示談が成立した、本人が反省している、身元保証人が付いたなど、敢えて前科者にする必要がない、あるいは、社会内での更生が期待できるような場合に、検察官の裁量により不起訴にする場合を言います。
■今回の再逮捕におけるメディア報道のあり方について
「逮捕=有罪」と決めつけた報道が多数見られた現状については、通常は、尿検査で「陽性」反応が出たら「有罪」推定が働きますので、その意味ではやむを得ないのではないかと思います。
とはいえ、傍目から見てメディアからのバッシングが強すぎ、ASKAさんの逃げ道を残してあげたら良かったかなと思ったりしました。再犯率の高い覚せい剤事犯において、ASKAさんがこれまでどのような努力をされてきたのか、一般的にはどのような治療施設があるのか、などの再犯しないための周りの援助について、もっと報道しても良かったのかなと思います。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)
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*twinsterphoto / PIXTA(ピクスタ)
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