■「働き方改革」に沿う立法か、改悪立法か
元々、この法案は電通問題が注目を浴びる前に提出されていて、この事件を受けてから作られたものではありません。ただ、政府としては、「働き方改革」の方針の下、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金を中小企業にも適用させるなどしつつ、一方で「時間に左右されない労働者」を公式に認知して、いわば合わせ技で長時間労働の蔓延から抜け出して行こう、という意図があると説明しています。
これに対し民進党など法案に反対する勢力は、「高度プロフェッショナル制度は、結局実質的に残業手当ゼロ円を助長することになる」と言っています。長時間労働依存の体質は、労組との合意さえあれば長時間残業を実施できる現在の法規制を根本的に改めて、強制的に禁止するほどのことに踏み切らない限り解消されない、というのです。
■この法案自体をプラスとみるか、練り直した方がいいのか
このような声に応えるように、政府も、電通事件を受けて、来年にも労働時間を強制的に抑制する法案を上程するよう、検討を始めたとのことです。ただ、政府は、その前にこの法案にはこの法案の必要性があるため、今国会で成立させたいという立場を崩してはいません。
今の法案は今の法案で通すのがいいのか、民進党などがいうように一度撤回して再度練り直すべきなのか。どちらにしろ、少なくとも、この国会で成立させる必然性を共有できるか、「熟議」がなされることが求められているといえるでしょう。
*著者:鉄箸法雄(法情報専門の編集者・ライター。出版社で、長年法律書籍・デジタルコンテンツ等の編集に携わったのちに独立。現在も「全ての人に良質な法情報を」をモットーに活動中)
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*Taka / PIXTA(ピクスタ)
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