「残業過労自殺」を後押ししたかもしれない、現状の労基罰則の問題点とは?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

すでにニュース等でご存知の方も多いと思いますが、2015年12月に電通に勤める女性新入社員が過労自殺し、2016年10月、労災認定された事件が大きく報じられました。また11月7日には、違法な長時間労働の実態を解明すべく、厚生労働省が労働基準法違反容疑で強制捜査に入り、勤務記録に関する資料などを押収しました。

当然、労務管理に関する実情を早急に解明する必要があることは言うまでもありませんが、実は現状の労働基準法にも大きな問題があり、これが実質的に過労自殺を助長している可能性も考えられます。そこで今回は、労働基準法が抱える現状の問題点や、一般の労働者が過労死に追い込まれないために注意すべきポイントについて、桜丘法律事務所の大窪和久弁護士にお話を伺いました。

*取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)

 

■労働基準法は罰則が甘すぎる?

現在、過労死に対して民事訴訟ではそれなりの賠償額が、会社側に科されることが多くなってきてはいます。とはいえ、労働基準法による罰則の甘さを含め、問題点はあるのでしょうか。

「労働基準法では、事業主が従業員に法定労働時間を守らずに働かせたり、割増賃金を支払わなかったりした場合に罰則規定を設けています。具体的には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰則が課されることになります。

ただし、労働基準法に違反した事実が明らかになった場合でも、労働基準監督署はまず是正勧告を行います。刑罰を課するために、いきなり検察庁に事件を送致するということはまずありません。また、過去の事例をみても、刑罰まで科される場合でも罰金刑止まりとなることがほとんどです。罰金刑の金額からすると、残業代を支払い続けるよりも罰金を支払った方が経済的なメリットがあると考える事業主もいるのではないでしょうか。」(大窪弁護士)

罰則が科されても数十万円程度なのであれば、そもそも法律を守るインセンティブが働かず、罰金上等、というような気持ちで、従業員に違法な長時間労働やサービス残業を強いる会社も当然あるでしょう。やはり現状の法制度が企業側に甘すぎるといえるのではないでしょうか。

 

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