かわいいペットとのひとときは、私たちの心を和ませてくれます。でも、ペットがアパートの壁などにつけた傷を理由に、大家さんからいきなり「アパートから出ていけ」と言われたら焦ってしまいますよね。今回は、そんなときにどうしたらいいのか、というお話です。
なお、お住まいのアパートが今にも倒壊しそうだったり、ペット飼育禁止条項があるような場合は、冒頭とは状況が全く異なります。ここでは、建てられてからそこそこ時間が経った、ペット飼育禁止条項のないアパートという前提でお話をします。
とはいえ、この問題は少し複雑です。なので、最初に①ペット飼育禁止条項がない場合に大家さんは賃貸借契約を解除できるのかというお話をします。次に、②立退きを正当化する理由と立退料の関係のお話、最後に③冒頭のケースで大家さんから「アパートを出ていけ」と言われたときにどうしたらいいかについてお答えしていきます。
①通常の飼育方法の範囲内であれば、大家さんは賃貸借契約を解除できない
ペット飼育禁止条項がないアパートでは、通常の飼育方法の範囲内であれば、大家さんは賃貸借契約を解除できません。通常の飼育方法の範囲内を超えた場合に限り、大家さんは賃貸借契約を解除できます。大家さんの解除が認められた場合、言い換えれば通常の飼育方法を超えていた場合とはどんな場合なのでしょうか?
裁判例で通常の飼育方法を超えていたと判断された事例としては、以下が挙げられます。
猫10匹を部屋で放し飼いをする一方で自分たちはその部屋に住まなくなったため、部屋の柱や壁は猫のひっかき傷だらけ。さらに部屋には猫の悪臭が染みつき、ダニ、シラミ、ノミ等で極めて不衛生な状態におかれていた。加えて、借家で10匹以上の野良猫の餌付けもしていたので、野良猫の鳴き声と悪臭で近所の人から苦情が寄せられていた。
他にも、「借家で鳩を100匹近く飼っていた事例」などがあり、いずれも極端な場合が当てはまっています。
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