弁護士が解説!自宅を遺産相続する場合のトラブル回避法(基本編)

■自宅のみが遺産の場合、トラブルを避けるためには?

遺産に自宅が含まれている相続の場合、自宅を換金して分けることに異を唱える相続人がいることは充分に考えられます。自宅以外に現金・預金・株式といった分けやすい遺産がない場合や、自宅を相続する相続人が他の相続人に対して支払う金銭がない場合も考えられます。

ここでは、このようにトラブルになりやすい“遺産が自宅だけ”の場合の対処法を2つ挙げていきます。

1.遺言書を書く

“自宅を妻(または長男夫婦等)に相続させる”などと、はっきり遺言書を残す方法がもっとも一般的です。

「死後の自分の財産を誰に渡すかについて、自らの意思で自由に決めることができます。これを遺言といいます。遺言制度は一定事項につき,遺言者の死後の法律関係を遺言通りに実現するために定められたものであり、遺言がある場合、原則として相続人は遺言に拘束されることとなります。」(鈴木弁護士)

よって、全相続人のうち1人でも遺言書の内容に全面賛成であれば、遺言書通りに財産を分けなければならないこととなります。

2.一定の相続人に遺留分を放棄してもらう

「遺留分」とは、“被相続人の兄弟姉妹以外の相続人が主張すれば、必ずもらえる財産の範囲”のことを指します。実はこの遺留分の権利が、遺言書の内容を侵害するようなケースも出てきます。

「遺留分について民法では“遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる(民法1031条)”と定められています。つまり、この遺留分だけは遺言書によっても侵されない、相続人の遺産に対する権利となります。」(鈴木弁護士)

遺留分に関して各相続人が有する権利の割合は、具体的には下の図のように割合となっています。

※図表:編集部作成

1.で紹介したように、遺言書の内容は最優先されるべきものという位置づけです。しかし、相続人の遺留分額に達しない内容の遺言があった場合、その相続人が遺留分の権利を主張し、法律的な手続き(遺留分滅殺請求)を取ると、遺留分を侵した範囲ではその遺言は失効となります。

「遺留分減殺請求の基本的な効力は、次のようになっています。①遺留分減殺請求権が行使されると、相続開始前に相続財産についてなされた贈与や、遺言によって相続開始時に第三者に対してなされる贈与(遺贈)が、遺留分侵害の範囲で失効します

すなわち、相続人でない人に対する贈与や遺贈がなされていた場合で、まだ目的物が引き渡されていない場合には引渡しをする必要はなくなり、既に引き渡されているときはこれを返すよう請求することができます。そして、これにより贈与や遺贈の目的物は遺留分減殺者と贈与又は遺贈を受けた者とで遺留分減殺額の限度で共有関係になります。

②減殺請求された人は、目的物そのものを返すのが原則ですが、目的物の額を金銭で支払うことにより、目的物そのものを返す必要はなくなります(民法1041条)。」(鈴木弁護士)

つまり、もし遺産が自宅だけとなる見込みの場合において、誰に相続させたいかをはっきり遺言書に書いても、他の相続人が遺留分を主張する手続き(遺留分滅殺請求)をした場合、自宅を売らざるを得なくなる事態も考えられるということです。

そのため、生前に自宅を継ぐ相続人以外の親族に、遺留分を放棄してもらうこともできます。

ただし、遺留分を放棄してもらいたい相続人が「自分を信じられないの?」などと感情を害することも考えられます。その場合、代わりに何かを提示し、穏やかに説き伏せるなどの用意も必要になるでしょう。事前に弁護士などの専門家に相談し、円滑な相続ができるよう準備しておくことが大切です。

 

*取材・文:拝野洋子/はいのようこ(社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー 。はいの事務所代表。大手地方銀行入行後、税理士事務所などに勤務し助成金支給申請、損保代理店業務、行政書士補助等を経験。その後電話年金相談員、労働施策アドバイザーなどを経て、主に個人向けマネー記事等を執筆。『All  About』で出産育児・給付金ガイド、『ココライン』にて子育て・お金アドバイザー、ほか『Woman money』 、『マネーの達人』などに執筆。Yahoo!Kazok「妊娠出産手続き得するお金チェックリスト」、ダイヤモンド・ザイなどの雑誌で監修。HP「気軽に相談!人と保険とお金の情報テラス」、ブログ「家計にやさしい年金保険講座」

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