現在、雇用者の約4割が非正規雇用者であることが分かっていますが、健康格差の是正において重要な事柄の一つが、これら非正規社員に対しての待遇格差の改善です。
そこで、非正規雇用者のなどに関する問題点について、労働問題に詳しいピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお話を伺いました。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
■非正規社員だからといって社会保険に加入させてもらえないのは違法?
非正規社員でも、週5日出勤し、正規社員と同じくらい働いているのに、社会保険に加入させてもらえないといったケースも、実際には多いと思います。このような非正規社員の扱いは、法的に問題はないのでしょうか。
「“非正規社員”とは“正社員”と対置される用語ですが、“期限の定めのある労働者(契約社員、パートタイム、アルバイト等)”ということであり、“非正規”という表現は、そもそも正確ではありません。つまり、“非正規社員”と呼ばれる雇用関係にあっても、雇用主との関係は、非正規=正規な雇用ではないという意味ではないのです。
従って、非正規社員であれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険に、一切加入しなくていいということはなりません。一定の条件を満たす場合には、雇用者は非正規社員も社会保険に加入させなければならないのです。
とはいえ、現実には、要件を満たしても加入していない中小企業は多いかと思います。また、社会保険を加入させなくても良いという考えが、非正規社員の増加にも関連していると考えられます。これは、雇用主側に非正規社員のほうが、雇用の責任が軽くて済むと考える間違った認識が蔓延していることが一因となっているのです。
こうした現状から、労働者の立場としては、自己の権利をしっかり調べ、雇用主に対して主張すべきことは主体的に主張していかなければいけないのです。」(森川弁護士)
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