弁護士が警鐘を鳴らす「健康格差」問題…非正規社員も社会保険に加入できるのか

■「健康に生きる」権利で非正規社員も守られるべき

社会保険だけでなく、会社側の費用で健康診断を受けさせるといった福利厚生にも、正規社員と非正規社員の間に待遇格差があるようです。

「今や“非正規”の問題は、少数者の問題ではなく、半数にも至ろうとしている労働者全体の問題として社会的・政治的に提起していく必要があります。同じような動きがあると困るので、日本ではなかなか報道はされませんが、フランスや韓国でも労働者の待遇をめぐってゼネラルストライキなどの大きな大衆行動が行われ政府に圧力をかけています。

日本国憲法第25条には、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すると記載されていていますが、<生きる>権利とは<健康に生きること>の権利です。

つまり、このことは<健康に生きられなければ生きたことにならない>ということと同義です。例えば“健康診断”というのは、その最低限のチェックの一つです。これは単なる健康の確認という認識ではなく、労働者が自分自身を守るために行うものという自覚が必要だと思います。幸いにして今のところ日本では健康保険制度がありますが、それでも“健康格差”は広がりつつあるのが現状です。

自分を守るために“健康”というのは重要な要素です。 こうした<健康に生きること>の権利が侵害されているのであれば、非正規社員も団結して声をあげることが必要だと思います。」(森川弁護士)

同一労働同一賃金の実現に向けた検討会が厚生労働省に設置され、正規雇用と非正規雇用の待遇改善について見直しに向けての具体的な作業が始まっていますが、現在の終身雇用を前提とした大企業中心の産業衛生の法制度も同様に見直しが必要だと考えられます。

また、企業本位の目線から見ても、欠勤や休職などによって生産性が落ちることに対する予防や対策だけでなく、出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題によって、業務のパフォーマンスが上がらない状態に対する予防や対策が重要であるということも、産業衛生分野の研究で指摘されています。

社員一人ひとりの健康は、会社経営の健全性を高めることではなく、それ自体が大事なことです。雇用者も労働者も何よりも自分自身が心身ともに健康に働けるように心がけていくことが大切なのです。

 

*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)

【画像】イメージです

*わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)

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