■過労自殺が企業の責任となった先行事例が存在
過労自殺について遺族が企業の責任を求めた先行事例、いわゆるリーディングケースとして最高裁平成12年3月24日判決があります。最高裁は、長時間残業でうつ病にかかった労働者が自殺した場合について企業の責任を認めました。
最高裁はこの判決で、上司が労働者の恒常的長時間業務・健康状態の悪化に気づいていたにもかかわらず、仕事量を軽減するといった適切な措置を採らなかったことを過失とし、そのためにうつ病にかかって自殺したと認めました。
企業は、労働者が過重労働になっていないか、健康状態が悪化していないかに気を配らなければいけません。労働者の健康状態が悪化していると認められるのであれば、または当然そうでなくとも労働者の労働が過重になっているのであれば仕事量を調整しなければならず、そうした配慮・措置を採らなければ過労死・過労自殺について賠償責任を負うことがあります。
今回のケースでも、労働基準監督署が昨年11月上旬にはうつ病が発症していたと認定しているとのことですので、同じ頃にうつ病を認定できるような事情があったものと考えられます。勤務先や上司の方でそうした事情を把握し、労働者の長時間業務・健康状態の悪化(うつ病を思わせる事実)に気付いていたにもかかわらず適切な措置を採らなかったのであれば企業の方で賠償責任を負う可能性があります。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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*わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)
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