■単身者ばかりにシワ寄せがいかない平等な制度とは
女性の社会復帰のサポートが行政でも民間でも進んでいたり、男性社員にも育児休暇を認めたりといった動きもすでに始まっています。その一方で家庭を持っていない独身の労働者にシワ寄せがきていると言った話も聞きます。
全社員が平等に法律で定められた休暇制度の恩恵を受けることができるようにするには、どういった法的整備が必要になるでしょうか。
「法制度で一律に休暇を指定した場合、それらの制度が普及する壁となる最大の要因として、そもそもその時間帯に業務を停止できないということが想像できます。
経済効果も期待するということは、現実問題として休暇中に消費されるサービスや商品を提供する業務に従事する人は業務を継続しなければならないことが前提となっており、一部の人しか制度の利益を享受できない恐れがあるのです。
現代においてはサービス業をはじめとして事業形態の多様化が進んでおり、そもそも全国民が同じ時期、時間帯に一斉に休むことは困難なのが実情です。プレミアムフライデー制度のように、副次的効果として消費喚起も目指すのであれば、サービス業に従事する人もできるだけ広範囲で制度の利益を享受できるように工夫することが求められます。
法制度で休暇を義務付けていくという発想自体は必ずしも悪くないと思います。しかし、こうした制度の導入を真剣に導入するのであれば、業種や企業によって適用する時間帯や時期を柔軟に変更できるようにしつつ、普及を図ることが重要になるでしょう。」(星野弁護士)
ワーク・ライフ・バランスの是正は、法律を変えるだけではなく、各企業が自主的に労働に対する意識を改めていかなければいけないということが、星野弁護士のお話からも分かると思います。優秀な人材が海外に流失しているという話も昨今聞かれるようになってきましたが、こうした問題は日本企業の労働時間と休暇に対する意識が重大なファクターになっていると考えられます。
働きやすい環境を提供できる企業を目指すことが、業績アップや優秀な人材確保にもつながるということを念頭に職場環境を変えていくことが、日本企業には必要なのかもしれません。
*取材協力弁護士:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)
*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)
【画像】イメージです
*cba / PIXTA(ピクスタ)
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