社員の出社はどう保障?台風などの自然災害で想定すべき企業のリスクマネジメント

■自然災害によって取引先への支払いが遅れてしまった場合は?

自然災害によって取引先との支払日に間に合わなかったケースなど、法律的にはどういった特例があるのかどうかも気になるところです。また、自然災害によって支払いが遅れたケースでも、企業の賠償責任が発生するのでしょうか。

「原則として、契約上の債務不履行責任が発生するのは、債務者に故意・過失があったときです。そのため、自然災害などの不可抗力で債務が履行できなかったとき、『出社できない従業員』や『納品できない売主』は損害賠償責任を負いません。

ところが、金銭の支払債務は特別で、不可抗力で免責されません。支払いの遅れが自然災害によるものだったとしても、法的には遅延利息が発生してしまいます。 大規模災害において、借入金返済や手形決済に猶予の措置が取られることがありますが、これは限定的な例外です。

自然災害は発生頻度が低いこともあり、特に中小企業にとっては十分な対策をしづらい事柄かもしれません。しかし多くの企業に共通したリスクになりますので、同業他社・大手取引先等と情報交換・協力してマネジメント体制を整えていければ効率的な対策になり得ます。」(渡邊弁護士)

自然災害は突発的に起こるものですが、企業は従業員・顧客の生命身体の安全に配慮する必要があるということを認識しておきましょう。また、想定されるリスクについては、必ずしも免責されるわけではないということを意識し、何が優先事項なのかを見極めて対策を考えておくことが大切です。

 

*取材協力弁護士:渡邊寛(和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)

*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)

【画像】イメージです

* y.h-to / PIXTA(ピクスタ)

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